風鈴が並ぶ能作の直営店=東京・日本橋

富山の工芸品、接客できず苦戦 東京の直営店

2020/07/06 01:20

 新型コロナウイルスの影響を受け、東京で富山の工芸品の売れ行きが落ち込み、富山県内の事業者が苦しんでいる。都内の直営店が緊急事態宣言中に休業を余儀なくされ、営業再開後も購買意欲の高い訪日外国人客が戻ってきていないためだ。飛沫(ひまつ)感染防止で長時間の接客がしにくいのもネックで、業界関係者からは「工芸品は歴史や技法を伝えてナンボだからつらい」と嘆き声が聞かれる。

 

 鋳物メーカーの能作(高岡市)が東京・日本橋の商業施設「コレド室町テラス」内に設ける直営店は、真ちゅう製の風鈴がずらりと並び、透き通った音色が響き渡る。この時期は風鈴やビアカップが売れ筋だ。

 

 コレド室町テラス店は昨年9月に開業した。初の路面店で高岡の工芸を発信する拠点と位置付ける。ただ、コロナで4月上旬から1カ月半余り休業した。客足は戻ってきたが、同店の宇喜多秀美さんは「中国や欧州のお客さまはまだまだ」と話す。

 

 能作の都内の直営店はコレド室町テラス店とパレスホテル東京店、日本橋三越店、松屋銀座店の4店。富裕層や外国人客が多い首都圏は主要販路先となる。能作の売り上げは休業の影響などで4月が前年同月比40%減、5月が35%減となった。特に外国人客がよく訪れる店は苦戦している。

 

 コロナ禍(か)で売れているのは、抗菌性のある皿やせっけんトレーなど。ネット販売も伸びているが、工芸品はスタッフの説明を聞いた上で手で触り、感触を確かめ購入するケースが多く、能作千春専務は「接客しにくいのは厳しい。売り方を工夫したい」と語る。

 

 鋳物メーカー・ナガエ(高岡市)の企画販売会社ナガエプリュスが東京・神宮前に構える直営店は一時休業するとともに、飲食の提供を休止し、スタッフを2人から1人に減らした。

 

 2017年に来日したトランプ米大統領のメラニア夫人に安倍昭恵首相夫人から、ナガエのスズ製ブレスレットが贈られたことがある。最近はアクセサリーが好調で売り上げ回復へ店舗限定の商品を投入する。

 

 伝統工芸高岡漆器協同組合の柴田治之理事長は東京の百貨店で催事が中止となったことに触れ、「産地全体でも4、5月の売り上げは50%にいっていないと思う」と打ち明ける。

 

 伝統産業の危機感は強い。工芸品の商品企画を手掛ける「和(あ)える」(東京)は5月に伝統産業従事者367件にコロナの影響調査を行い、4割が「このまま需要が回復しない場合、年内に廃業を検討せざるを得ない」と答えた。「高級品や嗜好(しこう)品を扱う産業のため、需要回復には時間がかかる見通し」という。

 

 能作には伝統工芸のM&A(企業の買収・買収)の相談が寄せられている。県内の生産額が1990年代のピーク時の3割近くにまで落ち込んでいる工芸品は、「コロナ・ショック」で事業環境が一段と厳しくなっている。