最後の営業日を愛用のフィルム映写機(右)とともに迎えた藤岡さん=笠市町

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ありがとう駅前シネマ 金沢 最終営業にファン続々

2020/04/01 01:35

 映画隆盛期の昭和30年代から営業を続け、裏通りの立地を生かした成人映画館として根強いファンに支えられた金沢市笠市町の「駅前シネマ」が31日、閉館した。「ありがとう駅前シネマ」「夢を見させていただいた」。最後の営業日も常連や閉館を知ったファンが駆け付け、昭和、平成を彩ったピンクネオンとの別れを惜しんだ。

 

 「ここに来るのが楽しみやった。長いことお世話になったから、皆さみしいと思う」。月1回ほど通う70代男性はつぶやいた。

 

 最終日はロマンポルノの歩みをたどる「ザッツ・ロマンポルノ」などが上映された。ロビーには女装の常連客が集まり、藤岡紫浪(しろう)館長(72)に贈る寄せ書きが用意された。「長い間おつかれ様でした」「駅シネ大好きでした」などと感謝やねぎらいの言葉が並ぶ。

 

 駅前シネマは1958(昭和33)年に藤岡さんの祖父が開業し、当初は大衆向けの娯楽作品を割安で再映した。70年に藤岡さんが経営を引き継ぎ、ピンク映画にくら替えして人気となった。

 

 こだわってきたフィルム上映の継続が難しくなったことや、365日働きづめの藤岡さんの体力が続かなくなったことから閉館に至った。新型コロナウイルスの感染拡大も影響したという。

 

 閉館が決まり、「思いのほか惜しむ声を多くいただいた」と藤岡さん。深夜営業の土曜には通常の倍の約200人が来場した。

 

 フィルム映写機は廃棄し、跡地はマンションになる予定となっている。

 

 昭和の猥雑(わいざつ)さを色濃く残していた駅前シネマ。閉館によって県内にはミニシアターを除き、単館の映画館はなくなった。「時代とともに消えるものは消えればいい。元気に最後まで営業することができ、思い残すことはない」と藤岡さんは静かに語った。