進行前立腺がんの治療薬開発へ研究を進める河野特任助教(手前)と髙橋教授=金大角間キャンパス

進行前立腺がん治療、有効物質を特定 金大グループ

2021/01/05 01:07

 金大がん進展制御研究所の河野晋特任助教らの研究グループは、進行した前立腺がんの新しい治療薬となる化合物を特定した。スパイスとして使われるブラッククミンの種に含まれる「チモキノン」という成分で、がんの成長を助ける遺伝子異常の弱点を突いて細胞死させる薬として期待される。他のさまざまながんの治療にもつながる。

 

 前立腺がんは進行して他の臓器に転移する段階になると、3割程度の割合で「RB1」という遺伝子が消えてしまう。この遺伝子はがんを抑制する働きを持ち、一般的に欠失するとがん細胞の増殖を助けることになる。

 

 一方で、RB1がなくなると「SUCLA2」という別の遺伝子もなくなることが分かった。グループは、この「SUCLA2」の欠失に着目し、これを標的とする化合物を探った。約2千種類を調べた結果、チモキノンに効果があり、がん細胞を攻撃して細胞死させることを突き止めた。

 

 がんの成長を助けるはずのRB1欠失は、同時にSUCLA2欠失を引き起こすため、かえってがんの弱点となることが明らかとなった。

 

 進行前立腺がんは男性ホルモンを抑える薬で治療する場合が多い。ただ、続けていると効果が薄れるケースがあり、新しい治療法の開発が課題となっている。

 

 グループによると、遺伝子の欠失を標的としたがん治療薬の実用例は少なく、河野特任助教は研究の成果について「効き目のある化合物を特定できたことを含めて意義は大きい」と強調する。

 

 チモキノンはキンポウゲ科の植物ブラッククミンの種に含まれる。種はスパイスになるほか、種から抽出されるオイルも食用に使われている。マウスを使った実験では、チモキノンを注射するとがんが大きくならないことを確認しており、グループは現在、治療薬の開発へ研究を進めている。

 

 指導役を務める髙橋智聡(ちあき)教授は「SUCLA2遺伝子の欠失が現れる肝細胞がんなどの治療にも効果が期待できる」と話した。