3代兼若が手掛けた日本刀に見入る北学芸主幹。近く公開される=県立歴史博物館

兼若の刀、新たに確認 金沢の愛好者、石川県立歴史博物館に寄贈

2020/11/16 01:35

 藩政期に活躍した加州(かしゅう)刀(とう)の名工、3代「兼若(かねわか)」が手掛けたとみられる日本刀が15日までに、市内のコレクターの所蔵品で新たに確認された。県立歴史博物館によると、歴代兼若の中でも優れた刃文(はもん)の華やかさが遺憾なく発揮されており、3代が刀工として熟練の域に差し掛かった頃の作品と推定される。寄贈を受けた同館は週内にも期間限定で展示する構えで、「傑出した出来栄えを多くの人に見てほしい」としている。

 

 県立歴史博物館で今夏に予定していた特別展「大加州刀展」(来夏に延期)に合わせ、市内在住の刀剣愛好者の寺川広さん(60)が多くの人に鑑賞してもらいたいと寄贈を申し出た。

 

 刃渡り60センチで、身幅がやや広く、先幅が狭まり、反りが浅い。焼き入れで生じる波模様「刃文」は、大きく丸い凹凸が連続する「互(ぐ)の目」や、ゆったりと波打つような「のたれ」が見られる華やかな仕上がりだ。

 

 刀身のうち、柄に収まる部分「茎(なかご)」の表には刀工の名前「賀州住兼若」、裏には制作年月「延寶(えんぽう)六年二月吉日」が彫られている。2代は前年の1677(延宝5)年に死去していることから、長男の3代兼若が制作した刀とみられる。

 

 同館によると、1684(貞享(じょうきょう)元)年に加賀の刀工を位付けした調書では、兼若が「上作」の中に明記され、中でも3代は最も巧みな刃文を残したとの呼び声が高い。当時、藩が刀工に鋳造を命じる場合の工賃も、この調書の位に応じて区別されていたという。

 

 加賀の刀工にとって元(げん)禄(ろく)年間(1688年~)から宝永年間(1704年~)にかけては、天下泰平の世となって社会が安定し、藩の財政難もあって刀の需要が低下、不振の時代が訪れたとされる。北春千代学芸主幹(73)は「寄贈された刀は、そうした時代直前の一番恵まれた時期に作られた。3代兼若も青年から壮年にかかる脂が乗り切った頃で、熟達した技術が発揮されたと言えるのでないか」と評価する。

 

 同館では3代兼若を5点所蔵するが、寄贈品は未確認のものという。新型コロナの影響で大加州刀展は来年度に延期したため、寄贈品がいち早く県民の目に触れる機会をつくる構えだ。北学芸主幹は「刃文のすばらしさを自身の目で感じ取ってほしい」と語った。