無観客公演の収録に臨み、気迫の「殺生石」を繰り広げる出演者=金沢市の県立能楽堂

一流の芸、映像で届け 無観客公演、県が収録開始

2020/06/07 01:42

 新型コロナウイルスの影響を受けた石川県内の伝統芸能を維持、継承するため、県が実施する無観客公演のインターネット配信に向けた収録が6日、金沢市の県立能楽堂で始まり、県能楽文化協会員の宝生流能楽師らが能「殺生石(せっしょうせき)」を上演した。今月下旬にかけて一般財団法人県芸術文化協会に加盟する各団体の収録を行い、特設サイトで順次、映像を公開する。

 

 「いしかわの伝統芸能WEBシアター」と銘打ち、藩政期から石川の地で受け継がれる一流の芸を国内外に発信する。コロナ禍で公演中止が相次ぐ中、無観客ながら芸を披露する場を用意し、伝統芸能の維持、継承にもつなげる。

 

 芸文協に加盟する県能楽文化協会を皮切りに、県箏曲連盟、県民謡協会、県太鼓連盟、県吟剣詩舞道総連盟、県邦楽舞踊協会が県立音楽堂邦楽ホール、北國新聞赤羽ホールで収録に臨む。

 

 県立能楽堂では2月下旬から主な公演を中止しており、演能は4月5日に金沢能楽会が実施した別会能の「船弁慶」のインターネット配信の収録以来、2カ月ぶりとなった。

 

 収録は能舞台に1台、客席に3台のカメラが設置され、観客のいない独特の雰囲気で行われた。

 

 「殺生石」は、近づく者の命を奪う石となった妖(よう)狐(こ)を、高僧が成仏させる物語で、シテ(主人公)、ワキ(相手役)、地謡(じうたい)、囃子(はやし)の出演者は、躍動感あふれる舞台を繰り広げ、画面を通して「加賀宝生」の伝統と気概を伝えた。

 

 金沢は「空から謡(うたい)が降ってくる」と言われたほど能が盛んな土地。加賀藩主が宝生流の能を愛好し、庶民にも広く推奨したことから「加賀宝生」として独自の発展を遂げてきた。映像にはこうした歴史や演目の解説が加えられ、日本語、英語、中国語などの字幕を入れて公開する。

 

 シテを務めた佐野弘宜(こうき)さんは「舞台に上がること自体が久しぶりで、無観客の収録でもあり緊張した」とほっとした表情で汗を拭った。地謡で出演した県能楽文化協会の佐野由於(よしお)専務理事は「コロナ禍を乗り越えるためにも、今、我々ができることを力を合わせてやっていきたい」と話した。