千田北遺跡で出土した木製の金箔押し笠塔婆=市埋蔵文化財センター

平安末期に最新仏教文化 金沢・千田北遺跡 国内初出土の金箔押し笠塔婆

2019/10/30 01:32

 千田北遺跡(金沢市千田町)で出土した国内唯一の金箔(きんぱく)押し木製笠塔婆(かさとうば)の製作年代が、当初の推定より半世紀ほど前の平安時代末期であることが市埋蔵文化財センターの調査で分かった。金箔の貼り付けに使われた漆の年代測定で特定した。当時、国内でも建立され始めたばかりの笠塔婆を金箔で荘厳(しょうごん)していたことになり、同センターは「最新の仏教文化が根付いていたと裏付ける遺物となる」としている。

 

 笠塔婆は、柱状の塔身に笠をのせた形状をしている。塔身に張られた「額(がく)」と呼ばれる板には仏を示す梵字(ぼんじ)が書かれ、文字部分に金箔を用いた装飾が残っている。2018年、千田北遺跡で出土した。

 

 これまで他の出土品の年代などから、笠塔婆は鎌倉時代の13世紀頃の建立と考えられていたが、金箔の接着剤として使用された漆の放射性炭素年代測定を行ったところ、少なくとも12世紀中頃までさかのぼることが判明。平安末期の製作、建立である可能性が大きくなった。

 

 同センターによると、歴史書「吾妻鏡(あづまかがみ)」の記述などから、国内で金箔の施された笠塔婆が確認されるのは平安末期以降で、千田北遺跡出土の笠塔婆の時期と重なる。このため、当時、中央の先進的な仏教文化を把握している在地の有力者がいたと考えられ、担当者は「文献史料ではうかがい知れなかった地域の歴史が明らかとなった」と話した。

 

 千田北遺跡で出土した笠塔婆は珠洲市の野々江本江寺(ぼんこうじ)遺跡に続き国内2例目で、箔押しが認められる遺物としては唯一。「阿弥陀如来」「勢至菩薩」「観音菩薩」の梵字を記した3基分の部材計27点が遺跡の堀から見つかっている。高さは2・5メートルほどで、供養目的で墓地や街道沿いに建てられ、何らかの理由で廃棄されたとみられる。

 

 同センターは11月2日に開く市民ふるさと歴史研究会で、長期保存の処理が施された笠塔婆を公開し、調査成果や歴史的意義を解説する。午前10時、午後1時半からの2回で、定員は各30人。申し込みは市埋蔵文化財センターまで。