きょうのコラム『時鐘』

2019/01/23 00:38

 日本人(にほんじん)はユーモアの感覚(かんかく)が乏(とぼ)しいといわれるが、そうでもあるまい、と反論(はんろん)したくなる一(ひと)つが毎年恒例(まいとしこうれい)のサラリーマン川柳(せんりゅう)である。入選作(にゅうせんさく)の一(ひと)つに「叱(しか)っても褒(ほ)めても返事(へんじ)は『ヤバイッス!』」

さる業界(ぎょうかい)の隠語(いんご)のはずが、軽(かる)いノリで若者(わかもの)たちに流行(りゅうこう)し、職場(しょくば)にまで侵入(しんにゅう)してきた。人(ひと)前(まえ)で口(くち)にしてはいけなかった言葉(ことば)を、若(わか)い女(じょ)性(せい)も平気(へいき)で使(つか)う。何(なん)とも「ヤバイ」ことになった

しっかりせんか、とクチバシの黄色(きいろ)い後(こう)輩(はい)を叱(しか)る。元気(げんき)あふれる親父(おやじ)川柳に出合(であ)うと、うれしくなる。作(さく)者(しゃ)の多(おお)くは話(はなし)の潤滑油(じゅんかつゆ)に、軽(かる)くしゃれを挟(はさ)むオジサン世代(せだい)だろう。興(きょう)に乗(の)って連発(れんぱつ)し、周(しゅう)囲(い)から「親父ギャク」と切(き)り捨(す)てられてホゾをかむ面々(めんめん)が、晴(は)れて鬱(うっ)憤(ぷん)を晴(は)らす「サラ川」である

去年暮(きょねんく)れ近(ちか)く、日産(にっさん)トップの逮(たい)捕(ほ)で、「親父ギャク」が輩出(はいしゅつ)した。ボスの名(な)前(まえ)に除夜(じょや)の鐘(かね)の響(ひび)きを重(かさ)ねる初歩的(しょほてき)な駄(だ)じゃれ。出来(でき)はともかく、独(ひと)り寂(さび)しく鐘の音(ね)を聴(き)くだろう、と親父たちは予想(よそう)し、結局(けっきょく)、当(あ)たってしまった。年(とし)が明(あ)けても、「ゴーン」は、やまない

払(はら)っても払いきれないのが煩(ぼん)悩(のう)である。親父ギャクの洞察力(どうさつりょく)を、ゆめゆめ侮(あなど)るなかれ。