きょうのコラム『時鐘』

2020/02/25 00:54

 仕事柄(しごとがら)、紙面(しめん)の隅(すみ)の小(ちい)さな記事(きじ)が気(き)になることがある。「五輪(ごりん)代(だい)替開催(たいかいさい)の用意(ようい)」というトゲみたいな一文(いちぶん)が先(さき)ごろ、目(め)についた

ロンドン市長選(しちょうせん)の候補(こうほ)者(しゃ)が東京(とうきょう)五輪・パラリンピック中止(ちゅうし)を想定(そうてい)した発言(はつげん)、とあった。何(なに)につけ先回(さきまわ)りが好(す)きなのが、わがマスコミと政(せい)治家(じか)。笑(わら)って読(よ)み飛(と)ばせばいいだろう

休(きゅう)日(じつ)の昼(ひる)、不要不急(ふようふきゅう)の用(よう)事(じ)や人混(ひとご)みを避(さ)けよとあって、推理小説(すいりしょうせつ)を手(て)にした。外(そと)の騒(さわ)ぎに背(せ)を向(む)けた暇(ひま)つぶしがいささか後(うし)ろめたいが、毒(どく)にも薬(くすり)にもならぬ頭(あたま)の体操(たいそう)。ムダを承知(しょうち)で、謎解(なぞと)きに挑(いど)む。ミステリーの手口(てぐち)だけは分(わ)かるつもりである

木(き)を隠(かく)すなら森(もり)の中(なか)。怪(あや)しい人物(じんぶつ)、もっともらしい推理をちりばめて、真犯人(しんはんにん)をそっと潜(ひそ)ませる。謎解きの敵(てき)は、ややこしい情報(じょうほう)の洪水(こうずい)。本(ほん)の世界(せかい)も現実(げんじつ)も一(いっ)緒(しょ)か、と思(おも)いはウイルス騒(さわ)ぎに飛(と)んでいく。代替開催はマユツバにしても、デマやうわさが臆測(おくそく)を増殖(ぞうしょく)させ、騒ぎの正体(しょうたい)を見(み)えにくくする

名探偵(めいたんてい)ポアロや金(きん)田一耕助(だいちこうすけ)が束(たば)になれば「コロナの謎」は解けるだろうか。事実(じじつ)は小説より奇(き)なり。現実(げんじつ)の方(ほう)がよほど迫力(はくりょく)がある。途方(とほう)もない森に踏(ふ)み込(こ)んでしまった。