きょうのコラム『時鐘』

2020/09/20 00:12

 JRが東西(とうざい)の大都市圏(だいとしけん)で終電時間(しゅうでんじかん)を繰(く)り上(あ)げる。コロナ禍(か)で利用者(りようしゃ)が減少(げんしょう)したのを機(き)に、線路(せんろ)保守(ほしゅ)作業員(さぎょういん)の働(はたら)き方(かた)改革(かいかく)につなげるという

「終電車(しゅうでんしゃ)ひらひらと乗(の)る夜(よる)の蝶(ちょう)」(嶋田麻紀(しまだまき)・鉄道(てつどう)と詩歌(しいか))。深夜(しんや)の駅(えき)は色々(いろいろ)な役者(やくしゃ)が演(えん)じる人生劇場(じんせいげきじょう)である。きょうも何(なん)とか一日(いちにち)が過(す)ぎて行(い)った安堵感(あんどかん)を座席(ざせき)に沈(しず)ませる人(ひと)。短(みじか)い夜の先(さき)にまた明日(あす)が始(はじ)まる悲壮感(ひそうかん)を抱(いだ)いて、電車に飛(と)び乗る男(おとこ)たち

金沢駅前(かなざわえきまえ)の店(みせ)で遅(おそ)くまで飲(の)んで最終電車で小松(こまつ)に帰(かえ)る友人(ゆうじん)がいた。車中(しゃちゅう)で寝(ね)てしまい小松駅を通(とお)り越(こ)して福井(ふくい)まで行ったことも再三再四(さいさんさいし)。ちょっと一杯(いっぱい)のつもりで飲んで気(き)がつきゃ…のスーダラ節(ぶし)を地(じ)でいく男は少(すく)なくなかった

東京五輪(とうきょうごりん)が開(ひら)かれていれば都内(とない)の終電時間は繰り下(さ)げられる予定(よてい)だった。コロナ禍は「時計(とけい)の針(はり)」を逆(ぎゃく)に回(まわ)すことになった。しかし、オンライン在宅勤務(ざいたくきんむ)でネット社会(しゃかい)の「針」を先に進(すす)めたのもコロナだったのではないか

都会の駅のホームでは終電で帰る客(きゃく)と、始発(しはつ)で仕事場(しごとば)へ向(む)かう人がすれ違(ちが)うこともある。2本(ほん)の針は重(かさ)なったり追(お)いかけたり。時刻表(じこくひょう)は時代(じだい)と人の変化(へんか)を映(うつ)す鏡(かがみ)である。