きょうのコラム『時鐘』

2019/03/23 00:22

 3月(がつ)。たくさんの別(わか)れの言葉(ことば)を聞(き)く季節(きせつ)である。卒業(そつぎょう)・終業式(しゅうぎょうしき)。異動(いどう)する先生(せんせい)と別れる子(こ)どもたち。転勤(てんきん)のサラリーマン。議場(ぎじょう)を去(さ)って行(い)く老議員(ろうぎいん)

そこに、イチロー選手(せんしゅ)との別れが飛(と)び込(こ)んできた。時計(とけい)のような正確(せいかく)な行動(こうどう)をして時計よりも狂(くる)わないと自負(じふ)した選手だった。が、時計は「いつか止(と)まってしまう」との話(はなし)もあった。覚悟(かくご)はしていたのだろう。しかし開幕(かいまく)2戦(せん)での別れは予想外(よそうがい)だったに違(ちが)いない

最近(さいきん)の別れの言葉は「さようなら」と、悲(かな)しみをはっきり口(くち)にしない傾向(けいこう)がある。「バイバイ」「じゃあね」「またね」。引退(いんたい)の老議員が言(い)った「ほんなら」は「よろしくね」に近(ちか)い。金沢弁(かなざわべん)では「おゆるっしゅ」と言うのもあった。どれも軽(かる)く明(あか)るく深刻(しんこく)ぶらない

「今生(こんじょう)の別れ」などといえば言われた方(ほう)が驚(おどろ)く。次代(じだい)の若者(わかもの)に勇気(ゆうき)を与(あた)えて去(さ)って行く。そんな別れ言葉がいい。イチロー語録(ごろく)にあった。「自分(じぶん)の限界(げんかい)をちょっと超(こ)えることを繰(く)り返(かえ)す。その積(つ)み重(かさ)ねでしか自分を超えられない」。これを「成長(せいちょう)とサヨナラ名句集(めいくしゅう)」に加(くわ)えておきたい

桜(さくら)待つ春(はる)。平成(へいせい)との別れが刻一刻(こくいっこく)と近づいている。