北國新聞社より | 北國新聞社

きょうのコラム『時鐘』

2018/08/17 00:14

 いまどき、背筋(せすじ)をピンと伸(の)ばしたおしゃれな老紳士(ろうしんし)は珍(めずら)しくもないが、タオルのねじり鉢巻(はちま)きが似合(にあ)う78歳(さい)は、新鮮(しんせん)に映(うつ)った。不(ふ)明(めい)の2歳児(さいじ)を発見(はっけん)、保(ほ)護(ご)したボランティアの記事(きじ)をうれしく読(よ)んだ

以前(いぜん)は街(まち)の魚屋(さかなや)だったと知(し)って、鉢巻き姿(すがた)に納得(なっとく)がいった。救(きゅう)出(しゅつ)した後(あと)、汗(あせ)を流(なが)す風(ふ)呂(ろ)を勧(すす)められ、取材陣(しゅざいじん)の前(まえ)で「それはいけません」と無償(むしょう)の精神(せいしん)をひとくさり。年季(ねんき)の入(はい)った活動(かつどう)とお見受(みう)けした

ボランティアという耳慣(みみな)れない外国語(がいこくご)をよく聞(き)くようになったのは、確(たし)か阪神大震災(はんしんだいしんさい)の時(とき)。それまでも、「これが放(ほう)っておけるか」というやむにやまれぬ振(ふ)る舞(ま)いは当然(とうぜん)あった。以前(いぜん)は、どう呼(よ)ばれていたのだろう。善(ぜん)意(い)、奉仕(ほうし)、義援(ぎえん)、献(けん)身(しん)などと並(なら)べても、どうもしっくりこない。世(せ)話焼(わや)き、お節介(せっかい)では、断(だん)じてない

ともあれ、78歳がよどみなく「捜索(そうさく)ボランティア」と口(くち)にするほど、暮(く)らしに息(いき)つく言葉(ことば)になった。頻繁(ひんぱん)に声(こえ)が掛(か)かるのは困(こま)るが、忘(わす)れてはならぬ心(こころ)のありようだろう

2歳児の生命(せいめい)力(りょく)にあらためて感動(かんどう)したが、それに並(なら)んでまぶしい78歳の鉢巻きである。老(ふ)け込(こ)むなよ、とカツを食(く)らわされた。