きょうのコラム『時鐘』

2020/07/06 00:11

 休日(きゅうじつ)のうたた寝(ね)が、不意(ふい)に破(やぶ)られた。誰(だれ)かに呼(よ)ばれたかと思(おも)ったが、様子(ようす)が違(ちが)う。猫(ねこ)だった

悩(なや)ましくも甘(あま)く迫(せま)る愛(あい)の駆(か)け引(ひ)き。コロナ禍(か)のユウウツで、いつも以上(いじょう)にイラつき、荒々(あらあら)しく音(おと)を立(た)てて窓(まど)を開(あ)け閉(し)めしたら、騒(さわ)ぎは去(さ)った。猫は脅(おど)せば退散(たいさん)する。が、懲(こ)りないヤツも結(けっ)構(こう)いる

「五月蠅」と書(か)いて「うるさい」と読(よ)む。しゃれた言葉(ことば)遊(あそ)びを教(おそ)わったのは、漱(そう)石(せき)の小説(しょうせつ)に出(で)てきた名(な)前(まえ)のない猫。旧暦五(きゅうれきご)月(がつ)に出るハエは、確(たし)かにうるさい。よく見ると、愛らしさがないわけでもないのだが

「蠅憎(はえにく)し打(う)つ気(き)になればよりつかず子規(しき)」。まずは寛大(かんだい)に、軽(かる)くあしらう。が、我(が)慢(まん)にも限度(げんど)、殺意(さつい)が生(う)まれて血眼(ちまなこ)に。仕掛(しか)けて仕損(しそん)じが続(つづ)き、憎しみが一(いっ)気(き)に膨(ふく)らむ。そんな厄介(やっかい)な付(つ)き合(あ)いを続(つづ)けてきた。いまのウイルス騒ぎと、どこか似(に)ている気(き)がする

「コロナとの共生(きょうせい)」なるせりふを、有識者(ゆうしきしゃ)が盛(さか)んに口(くち)にする。心地(ここち)よく響(ひび)く美辞麗句(びじれいく)だが、憎(に)っくき敵(てき)と一緒(いっしょ)など、真(ま)っ平(ぴら)ご免(めん)。退散したと思わせて、またぞろ逆襲(ぎゃくしゅう)の気配(けはい)である

猫の恋は、確か春(はる)と秋(あき)のはず。コロナ憎し。哀(あわ)れ、猫の恋路(こいじ)まで狂(くる)わせるか。