きょうのコラム『時鐘』

2020/12/02 00:28

 もう12月(がつ)。いつも口(くち)にする「もう」が、今(こ)年(とし)はとりわけ重(おも)い。厳(きび)しい冬(ふゆ)を予感(よかん)するからか

「きっぱりと冬が来(き)た」という詩(し)を、確(たし)か中学(ちゅうがく)で習(なら)った。高(たか)村(むら)光太郎(こうたろう)の短(みじか)い作品(さくひん)だが、覚(おぼ)えているのは最(さい)初(しょ)だけというお粗末(そまつ)。「きっぱり」に引(ひ)かれたのだろう。夏(なつ)や秋(あき)の訪(おとず)れにはチグハグな言(こと)葉(ば)だが、冷(ひ)え込(こ)みの厳しい朝(あさ)、キーンと張(は)り詰(つ)めた大気(たいき)に触(ふ)れると「きっぱりと」目(め)が覚(さ)め、背筋(せすじ)が「きっぱりと」伸(の)びる。そんな冬の到来(とうらい)を何度(なんど)も知(し)った

忘(わす)れかけた一節(いっせつ)を思(おも)い出(だ)したのは、「勝負(しょうぶ)の3週間(しゅうかん)」という途(と)方(ほう)もない冬が来たせい。もう耳(みみ)に大(おお)ダコができたが、大事(だいじ)な年(とし)の瀬(せ)と正月(しょうがつ)を迎(むか)えるためには、今年最後(さいご)の我慢(がまん)を「きっぱりと」する覚(かく)悟(ご)をイヤでも迫(せま)られる

「旅(たび)に出(で)よ」「家(いえ)にこもれ」の情報(じょうほう)の股(また)裂(ざ)きには、面食(めんく)らう。それでも、自分(じぶん)で「きっぱりと」決断(けつだん)し、繰(く)り言抜(ごとぬ)きで従(したが)う勝負の冬にしたい。営業自粛(えいぎょうじしゅく)の要請(ようせい)に従(したが)う人(ひと)、あえてそれを拒(こば)む人、それぞれの「きっぱりと」した決意(けつい)を紙面(しめん)で知(し)ると、どこか頼(たの)もしくなる

暖冬続(だんとうつづ)きでたるんだ根性(こんじょう)には喝(かつ)も必要(ひつよう)。災(わざわ)い転(てん)じて福(ふく)、という初夢(はつゆめ)が待(ま)つかもしれない。