きょうのコラム『時鐘』

2020/01/26 00:49

 「景観(けいかん)10年(ねん)。風景(ふうけい)100年。風土(ふうど)1000年」という。地域(ちいき)や街(まち)づくりの心得(こころえ)のようなものだ

建物(たてもの)や道路(どうろ)などは、どんなに工夫(くふう)しても「景観」として馴染(なじ)むには10年かかる。伝統的(でんとうてき)な「風景」と言(い)われるのには100年が、歴史(れきし)と自然(しぜん)に溶(と)け込(こ)んでしまうのには1000年かかるとの意味(いみ)である

藩政末期(はんせいまっき)に造(つく)られ100年前(まえ)に増築(ぞうちく)された金沢(かなざわ)の旧(きゅう)家老(かろう)・奥村家(おくむらけ)跡(あと)土塀(どべい)が市文化財(しぶんかざい)に指定(してい)されて、その言葉(ことば)を思(おも)い出(だ)したのである。長町(ながまち)の武家屋敷(ぶけやしき)の土塀はよく知(し)られる。しかし兼六園周辺(けんろくえんしゅうへん)の風景として溶け込んだ家老屋敷の長(なが)い土塀が文化財になっていなかったとは意外(いがい)だ

いつも目(め)の前(まえ)にあるものはありがたさに気(き)づきにくい。時(とき)が美(うつく)しさを磨(みが)くとも言える。金沢市内(しない)では惣構堀(そうがまえぼり)や金沢城跡(じょうあと)なども市民(しみん)には当(あ)たり前(まえ)の場所(ばしょ)だったから、文化財の指定は驚(おどろ)くほど遅(おそ)かった

「文化」といわれるもの自体(じたい)がそうだ。何気(なにげ)ない顔(かお)をして古(ふる)くから横(よこ)にいるので改(あらた)めて「ありがとう」と言う気(き)にはならない。夫婦(ふうふ)も同(おな)じか。よく見(み)ると長(なが)い時間(じかん)に磨(みが)かれた古い文化財のよう。だれかが価値(かち)を認定(にんてい)してやらなくては。