きょうのコラム『時鐘』

2019/11/17 00:34

 お城(しろ)や神社建築(じんじゃけんちく)は完成(かんせい)した姿(すがた)よりも、建設途中(けんせつとちゅう)を見(み)る方(ほう)が貴重(きちょう)だと思(おも)う

できあがったものはいつでも見(み)られる。工事中(こうじちゅう)は一日(いちにち)ごとに姿(すがた)を変(か)えていく。育(そだ)ち盛(ざか)りの子(こ)どもを見(み)るようで気持(きも)ちがいい。その思いは公共物(こうきょうぶつ)もマイホームも同(おな)じだ。人(ひと)と建築の間(あいだ)にも一期一会(いちごいちえ)がある

大嘗祭(だいじょうさい)に使(つか)われた大嘗宮(きゅう)は一部(いちぶ)を公開(こうかい)した後(あと)に取(と)り壊(こわ)す。昔(むかし)は儀式後(ぎしきご)にすぐ壊された。しかし、今回(こんかい)は巨費(きょひ)を投(とう)じたのだから国民(こくみん)に見てもらうのは当然(とうぜん)である。伝統(でんとう)は過去(かこ)の踏襲(とうしゅう)だけでは守(まも)れない。大嘗宮は建設中からも外観(がいかん)を見られるようにした。いい判断(はんだん)だった

炎上(えんじょう)した首里城(しゅりじょう)の再建(さいけん)は時間(じかん)は掛(か)かるが、実現(じつげん)するだろう。その際(さい)はできるだけ工事中の城(しろ)を公開(こうかい)したほうがいい。日本(にほん)と中国(ちゅうごく)の特徴(とくちょう)が混(ま)ざった城(しろ)の復元(ふくげん)は恐(おそ)らく二度(にど)とはない。完成後には見えなくなる工法(こうほう)もある

地震(じしん)で破壊(はかい)された熊本城(くまもとじょう)も復元工事を積極的(せっきょくてき)に見せている。それを目当(めあ)ての観光客(かんこうきゃく)も多(おお)い。金沢城(かなざわじょう)の鼠多門橋(ねずみたもんばし)の復元も参考(さんこう)になる。あれだけの木橋(きばし)が街中(まちなか)に登場(とうじょう)するのは最初(さいしょ)で最後(さいご)になるはずだ。見ておくなら今(いま)のうちだ。