泥の除去作業に励む住民=5日午後1時15分、小松市中海町

 道路に転がる岩石や、家屋の中に入り込んだ泥の山が、復旧への歩みを阻んでいた。記録的大雨から一夜明けた5日、大きな被害を受けた小松市の中海町や古府町は、見たことのない惨状に覆われていた。河川氾濫の爪痕が町の至る所に残り、小松に生まれ育って見慣れていた風景は一変。床上浸水に見舞われた住民は「これからどう暮らせばいいのか」と漏らした。家、生活、仕事…。再建への道筋は見えない。(小松支社長・吉免宏樹)

  ●「片付け数カ月」「稲消毒を」中海町

 中海町で最も被害が大きかったのは、梯川に架かる中海大橋から山側へと続く集落だ。取材に向かうと足首まで泥に埋まり、思うように進めない。家屋の外壁に残る濁流の跡は、身長177センチの記者の頭より高い位置にあった。

 住民らは次々と家財道具を外に運び、ブラシなどで家から泥をかき出していた。実家の片付けを手伝っていた丹羽由香里さん(38)は「まだ手つかずの部屋がいっぱいある。全て片付くまで数カ月はかかりそう」と途方に暮れた。

 町の周囲に広がる水田も泥水に漬かった。数日中に稲を消毒しないと病気になる恐れがある。農家の北光博さん(72)は「収穫が近かったのに、がっかり。肥料価格も上がる中でダブルパンチだ」とうなだれた。

  ●「再開まだ考えられず」 赤穂谷温泉 

 町内にある創業100年余の赤穂谷温泉は、厨房、広間、浴室など1階の全ての部屋に泥水が入り込んでいた。「建物は改修だけで済むのか。今はまだ再開は考えられない」。田島康之社長(40)は館内を見渡し、ため息をついた。

 道路では重機がせわしなく泥を集め、徐々に通りやすくなっていく。それでも取材した住民全員が生活の再建に不安を抱いていた。

  ●納車の日に被災、廃車 古府町 

 鍋谷川の氾濫があった古府町では、5日から町が独自に災害ごみの仮置き場を設け、住民がまだ水がしたたるソファや家電を次々と持ち込んでいた。

 朝から7回もごみを運んだ鮮魚店経営の山岸久芳さん(57)は4日に納車されたばかりの軽トラックが廃車に。父から受け継いだ秘伝のウナギのたれも濁流に流された。「町が早くごみ置き場を設けてくれたのは良かったけど、とても仕事をできる状況じゃない」と肩を落とした。

 小松市は6日に第一コミュニティセンターにボランティアセンターを開設し、被災地の片付けを手伝う県民を受け入れる。7日には廃棄物の仮置き場を設けるほか、8日からは罹災(りさい)証明の申請受付を開始し、復旧に向けた動きも少しずつ出始めた。

 5日、中海町を視察した宮橋勝栄市長は「市としてできる限りのことをやる」と語った。行政は気落ちした住民にどこまで寄り添えるのか。その姿勢と、迅速、的確な対応が求められる。

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