吉川トリコさん(講談社提供)

選考委員会で意見を交わす(右から)林さん、村山さん、秋山学長=都内のホテル

 金沢学院大が主催する第28回島清(しませ)恋愛文学賞は29日、吉川トリコさん(44)の「余命一年、男をかう」(講談社)に決まった。吉川さんは北國新聞社の電話取材に対し「いつかは取りたいと思っていた憧れの賞だった。年を重ねるにつれ若い読者とズレがあるのではないかと不安だったが、学生さんに選んでもらえて率直にうれしい」と話した。

 吉川さんは、前回の島清恋愛文学賞の受賞者で、昨年10月に亡くなった山本文緒さんとのエピソードを紹介。吉川さんのデビュー作は2004年、別の文学賞を受賞したが、山本さんはその賞の選考委員を務めていた。

 吉川さんは「この受賞を天にお伝えしたい。受賞作はこれまでのキャリアで一番評価された作品であり、最後の最後にご褒美を頂いた思い」。受賞を機に「今後も女性にとっての結婚とは何かをテーマに、ミステリーやSFなどの形式で書いていきたい」と語った。

 選考委員会は東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開かれ、作家の村山由佳さん、林真理子さんと秋山稔金沢学院大学長が選考した。同大の学生が加わる推薦会議が20作品から3作品を絞り込み、選考委に推した。

 会見した村山さんは「文章が達者で心理描写が書き込まれ、ぐいぐい読めた。読後に気持ちがアップするような小説であることが好感を持てた」と評価した。

 貯金を趣味とする主人公が、金銭を介した契約結婚をするエピソードに触れ、村山さんは「互いに納得していれば結婚してもいい、という視点が面白く、結婚観に一石を投じている。人生を良いものと信じられず、お金を使わず、貯めることに躍起になる若い世代の空気を書いている」と評価した。

 贈呈式は8月2日に金沢市のしいのき迎賓館で行われる。賞金は100万円となる。

  ●恋愛、結婚の意味を問う 「余命一年、男をかう」

 節約とキルトが趣味の片倉唯は、40歳で気まぐれに受けた検診で進行した子宮がんを宣告される。どこか安堵した唯は節約生活を離れ、好きなことをすると決意。偶然出会ったピンクの髪のホストに勢いで大金を出し、お金を介した契約で結婚する。正反対の二人の日常をコミカルに描きながら、かたくなに生きてきた唯の変化と成長を通して、現代日本での恋愛、結婚の意味を鋭く問う。

 ★よしかわ・とりこ 1977年、浜松市生まれ。名古屋市在住。2004年「ねむりひめ」で「女による女のためのR―18文学賞」大賞・読者賞を受けデビュー。「グッモーエビアン!」「戦場のガールズライフ」が映像化された。女性の本音を軽快な語り口で綴る「マリー・アントワネットの日記」「女優の娘」など、女性、少女を描く小説を多数発表する。

 ★島清恋愛文学賞 大正時代に活躍した作家、島田清次郎(しまだ・せいじろう、1899~1930年)の顕彰を目的として、1994年に出身地の旧美川町が制定した。合併で運営を継承した白山市が2012年に廃止を決めたが、民間団体「日本恋愛文学振興会」が賞を引き継ぎ、14年から金沢学院大が運営母体となり、20年から主催となった。

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