大関昇進が決まった朝乃山を担ぐ朝鬼神(左)と朝乃若(右)=2020年3月、大阪市内(代表撮影)

 大相撲の元大関朝乃山(富山市呉羽町出身、富山商高OB、高砂部屋)の取組直前、背中に赤く浮かび上がる二つの手形はファンから「天使の羽」と呼ばれている。この正体は、花道で付け人の幕下朝鬼神(あさきしん)が渾身(こんしん)の力で朝乃山の背中をたたき、気合を注入するためだ。その天使の羽を生やしてきた朝鬼神が今場所限りで現役を引退する意向であることが22日、分かった。

 ●朝乃若、たたき込まれ8勝

 「朝乃山関にしているのと同じようにしていただきました」。22日、土俵に向かう十両朝乃若(佐渡市出身、金沢市立工業高OB)の背中を朝鬼神が思い切りたたいた。朝乃若に普段付いている付け人がけがをしたため、臨時で朝鬼神が付け人を務め、初めて気合を注入したという。

 気合をたたき込まれた朝乃若は、土俵上で闘志あふれる相撲を見せた。白鷹山を果敢に攻めて押し出し、勝ち越しを決めた。「今場所で朝鬼神さんが最後なので、絶対に勝ちたいという気持ちで挑みました。最後に白星を届けられて良かった」と語り、兄弟子に力をもらって白星につなげた。

 朝乃若と朝鬼神はともに朝乃山の付け人を務め、3人は強い信頼関係で結ばれている。朝鬼神は千秋楽で最後の一番に臨む見通し。

 29歳の朝鬼神はボディービルから力士に転身した異色の経歴を持つ。2015年の春場所で初土俵を踏んだ後、専門知識を生かし、付け人でありながら朝乃山のトレーニングに助言する「フィジカルコーチ」として、19年夏場所の幕内優勝を支えた。

 朝乃若が勝ち越しを決めたことで、高砂部屋の部屋頭になることも決まったが「あまり気にしないで、しっかり稽古して関取から落ちないように頑張る」と語った。今場所、高砂部屋は朝阪神が序二段優勝、三段目の長内が7戦全勝で千秋楽の優勝決定戦に挑むなど若手が活躍。弟弟子たちが朝乃山の留守を守っている。

無断転載・複製を禁じます