30日にオープンする「二代目丸一」

板谷社長(右)とスタッフにおでんのレシピを伝える谷さん夫婦(左)=富山市総曲輪3丁目

 ●「看板守る」常連の同業者継承

 「昼飲みの聖地」として愛され、新型コロナウイルスの影響で9月末に閉店した富山市総曲輪3丁目の居酒屋「丸一」が、常連客だった同業者によって30日に復活する。店舗は72年前に2号店として富山駅前から総曲輪に進出し、以来、多くの高齢者やサラリーマンらでにぎわった。新たな店ではおでんなどの名物メニューが引き継がれ、関係者は「大事な看板を守る」と強い思いで開店準備を進めている。

 引き継ぐのは富山県内外で飲食店を展開する「ピー・エム・シー」(富山市)の板谷真太郎社長(48)。丸一には30年近く前から通い、谷勝由店主(76)と気心の知れた間柄だ。丸一と小路を挟んだ向かいで居酒屋、谷さんが大家を務める近くのビルで焼き肉店を経営している。9月20日ごろ、閉店を悩む谷さんから「店を継がないか」と相談され「ファンの多い店を絶やしてはいけない」と2代目としての再出発を決めた。

 丸一は1945(昭和20)年、谷さんの父が終戦後すぐ、現在のCiCビル周辺に広がった闇市の一角で開業した。49年に総曲輪の現在地に2号店を出し、1号店を数年後に畳んだ。67年に谷さんが父から店を継ぎ、妻好子さん(72)と一緒に、おでんと地元の新鮮な魚介類を看板メニューに店を守ってきた。

 おでんの名物は北陸産を中心としたコウバコガニの「カニ面」、やや硬めで歯応えのある肉団子で、おでん以外では県産ベニズワイガニの雄を使った「かにの甲ら揚げ」だ。午前10時半から営業し、日中から夜中まで平日、休日関係なく多くの来店客でにぎわった。

 「年金をもらったじいちゃん連中がよく来て、仕事をサボって飲みに来る営業マンもいたなぁ。酔っぱらいの話を聞くのが楽しかった」と谷さん。提供する瓶ビールは毎日2ケース以上で、多い日は5ケースに上ることもあったという。

 北陸新幹線の開業で県外からの出張客、外国人観光客の来店も増えたが、コロナの流行で客足は一気に遠のいた。今年は8月20日から1カ月休業し、再開する気力と体力がなくなったという。板谷社長に秘伝のレシピを伝えた谷さんは「板谷さんは頼もしい限り。新しい時代に合った店を展開してほしい」と願う。

 「二代目丸一」はカウンターが4席少ない16席となるものの、最低限の改修のみで初代の雰囲気を引き継ぐ。調理場にぶら下がる神代杉、立山杉などの板を使ったメニュー表もそのままだ。板谷社長は「昼飲みの聖地のような場所。大好きな前の店の味と雰囲気をできる限り近い形でしっかりと伝えたい」と話した。

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