開館記念式典で館内を巡る谷口吉生さん=2019年7月、谷口吉郎・吉生記念金沢建築館

高岡複合施設の完成予定図。外観には「千本格子」のイメージを取り入れる

 「魅力的な空間。新しいご縁を大事に仕上げに力を入れたい」。文化功労者に選ばれた谷口吉生さんは北國新聞社の取材に対し、本社が高岡市広小路で建設中の高岡複合施設(仮称)への思い入れの強さを語った。周囲の景観を取り込んで魅力を増す谷口建築。栄誉に感慨をにじませ、「金沢の文化や風土の中で磨かれた建築を、高岡でも生かしたい」と抱負を語った。

 【本記 文化功労者に谷口氏】

 高岡複合施設は、富山新聞が創刊100年を迎える2023年の全面稼働を予定する。高岡は富山新聞の創刊の地である。

 加賀藩ゆかりの国指定史跡・高岡城跡(高岡古城公園)に面して立地し、各階の西側からは同公園を一望できる。谷口さんは「春に桜が咲き誇る高岡古城公園が目の前にある。この景観を生かし、建築の中に溶け込ませる」と構想を練る。高岡支社の事務所となる2階には水盤のある庭園も置く。

 谷口さんと高岡の縁は、藩政期以来つながりの深い金沢から生まれた。

 「十一屋小に通っていた頃の記憶は、今も温かい思い出として残っている」。谷口さんは戦時中の3年間、金沢に疎開した。寺町5丁目の吉郎氏の生家で暮らし、十一屋小に通った。

 金沢で設計を手掛けた3施設に足を運ぶと、ふと少年期に見た景色が浮かぶことがあり、「父からよく聞かされていた金沢の風土の影響を受けているのかもしれない」と語った。

 「現場のそこにしかない環境を大事にしている」という谷口さん。谷口吉郎・吉生記念金沢建築館長の水野一郎さん(80)は「現場で納得できるまで、自身の心に静かに問い続け、内面から湧き上がってくる考えを設計に反映させているように感じる」と話す。その徹底した内発的な姿勢が余計な装飾をそぎ落とし、シンプルで穏やかな空間につながっている、と水野さんは指摘する。

 谷口さんは目指す建築について「格式張ったものではなく、訪れる人が親しみを感じ、なるべく分かりやすく理解してもらえるようにしたい」と語る。建築に親しむ人が増えれば、景観に対する美意識が芽生えるとし、「建築を通して、きれいなまちづくりに貢献していきたい」とさらに前を見据えた。

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