富山地鉄独自のICカードで運賃を支払う電車の乗客=富山市内

電車内に増設された全国交通系ICカードの読み取り装置

  導入費、富山市が全額負担 

 富山地方鉄道(富山市)は10日から、Suica(スイカ)やICOCA(イコカ)など全国交通系ICカードの利用を始める。これまで使えなかった全国系カードで市内電車の運賃が支払えるようになるが、富山地鉄のICカード「えこまいか」「パスカ」を使うと運賃は1回180円に割り引かれるのに対し、全国系は通常料金(210円)のまま。市が導入費を負担した公費事業ながら、一部の利用者だけが恩恵を受ける「二重運賃」に「分かりにくい」と批判も出そうだ。

 新たに対応するのは10種類のICカード。あいの風とやま鉄道(富山市)が導入する「イコカ」を持つ県民や県外の観光客らが日頃使うカードで運賃を支払えるメリットがある。

 ただ「イコカ」などの利用者の運賃は割引対象外となる。運賃差を知らず「カードなら割引額」と勘違いしたまま利用を続けるケースもあるとみられる。

 富山地鉄は「えこまいか」と「パスカ」の利用者のみ割引運賃を適用することについて「多くの人に乗車してもらいたい」(広報担当者)との考えからという。全国系カードを割引対象外とした理由については、料金を均一にした場合、利用範囲が富山に限られる「えこまいか」などは使われなくなる恐れがあり、運賃差を設けることにしたと説明した。

 担当者は自社カードの発行枚数は「非公開」とし「自社カードはシステムを改修したばかり。残しておきたい」と話した。

 同社は6日までに市内電車内に全国系カードの読み取り装置を増設したが、電車に乗り慣れない利用者は二つの装置のいずれを使うのか迷いそうだ。

 市民からは「えこまいかもスイカも同じICカード。全額公費でシステムを改修したのに、一部の市民しか割引運賃の恩恵を受けられないのは公平性に欠ける」との声もある。

 初年度7900万円、来年度も維持費負担

 全国系の導入は、富山地鉄と富山市、JR西日本の連携で実現し、北陸の私鉄では初めて。旅行前の観光客から「スイカやイコカは使えますか」といった問い合わせが相次ぎ、市が「観光客の利便性を向上させたい」として導入費の7900万円を全額負担する。来年度以降も維持管理費を負担する方向で、富山地鉄などと金額を協議中という。

 市交通政策課の担当者は全国系の運賃割引を見送った理由について「運賃が実質高いのではなく、通常料金を支払っていると理解してほしい。小銭を使わずに済む利点がある」としている。

 「公費負担、全国でも珍しい」中川富大副学長(都市政策担当)

 全国の電車などの交通政策に詳しい中川大富大副学長(都市政策担当)は、富山市が市内電車での全国系カード導入事業費を全額負担したことに関し「市が公費で電車利用の促進を先導してきた歴史があり、今回も負担したのだろう。公費負担は全国の自治体でも珍しい」と話した。

 中川氏は市が「コンパクトシティー」実現のため、旧富山ライトレール線を運営するなど電車利用の促進に努めてきたと説明した。さらにコロナ禍で落ち込んだ市電の乗客を増やすには「電車の便利さをしっかりPRする必要がある」と指摘し、利用者を拡大する工夫を重ねるよう期待した。

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