多様な万年筆やインクが並ぶ売り場=富山市内の文具店

  多彩なインク、豊富なペン

 コロナ禍(か)で人と人の接触を控える動きが根強い中、コミュニケーションの手段として手書きの魅力が見直されている。多様な色合いのインクにのめり込む様子は「インク沼にはまる」と表現され、好みの色でしたためた文章やイラストを会員制交流サイト(SNS)で発信する動きも広がってきた。文具メーカーによる商品群の拡充も筆記具やインクにこだわる人たちの増加を後押しし、富山市内には手書き道具の専門店が登場した。

 富山市の文具店「オフィス・ヴォックス ファボーレ店」。入り口近くに万年筆やインク約200点が並ぶ一角がある。1本数万円の高級万年筆は別のコーナーで販売しており、入り口には日常使い用に1千円前後の商品が並ぶ。太いペン先で強弱を付けて書く「カリグラフィー」用のペンもあり、選択肢は豊富だ。

 色とりどりのインクの名称は「夜桜」「稲穂」など風流な響きで、棚の上段には「インク沼へようこそ」のPOP。店を経営する中田図書販売(富山市)によると、関連商品はじわじわと売れ続け、彩りが鮮やかなため店舗レイアウトを良くするのにも一役買っている。

 同社によると、ルーツは約5年前から流行する「大人の塗り絵」にある。パソコンが普及してペンの売れ行きが鈍る中のヒットに、文具メーカーは相次いで彩り豊かな商品を投入した。2019年には都内で「文具女子博#インク沼」が初めて開催され、3日間で5千人が訪れている。

  コロナ機に5月開業

 そんな中、富山市南田町1丁目に5月1日、手書き用の道具を集めた店「綴ル(つづる)」が開業した。7坪(約23平方メートル)の売り場では万年筆やガラスペン、オリジナルのレターセット、6色のインクを調合して好みの色を作るセットなど、100~200点を販売している。

 店主の沼美紀子さんによると、出店のきっかけの一つがコロナ禍だった。親しい人と会えなくなれば、メールではなく、ペンを握って思いを伝える意味が大きくなると考えた。最近は地域の景色や特産品を想起させる色の「ご当地インク」が各地で誕生しており、沼さんは「富山をイメージできるご当地インクも作りたい」と意気込んでいる。

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