田の神と山の神に感謝し、酒を注ぐ中村義弘さん(右)=金沢市車町

  ●三谷地区・中村さん方で祭事 「学校なくなっても文化絶やさず」

 金沢市の三谷地区に伝わる伝統行事「田祭(たまつり)・山祭(やままつり)」は9日、車町の中村義丸さん(88)方で営まれた。「金沢のあえのこと」とも呼ばれる祭事は、地区全体でも3軒が伝えるだけ。三谷小が再来年、不動寺小に統合される深刻な少子高齢化の中、住民は「学校はなくなっても文化は絶やさない」と伝統を守る決意を新たにした。

 田祭・山祭は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産となっている奥能登の「あえのこと」と似ており、姿が見えない神様に手を合わせ、膳でもてなす。招かれた神は来年3月9日まで滞在し、山と田へ戻る。車町では唯一、中村さんが祭事を続け、2年前に長男の義弘さん(60)に代替わりした。

 9日は住民8人が集まった。仏間に、仏壇と向かい合うように2組の赤色の膳が置かれ、地元で採れたキノコとサトイモを使った煮物やアジ、赤飯などの料理が並べられた。義弘さんは「猛暑の影響もなく、無事にコメを収穫できました」と感謝の気持ちを述べ、グラスに日本酒を注いだ。

 郵便局で働く傍ら、コメを栽培している義弘さんは「若い人が少なくなっている。一人でも町を出て行く人が減るように、田んぼを続けていかなければ」と話した。

 三谷文化保護協議会の山本建夫会長(80)は「学校がなくなることになり、住民の気持ちは沈んでいる。伝統を三谷の財産として残し、地域を盛り上げる方法を考えていきたい」と語った。

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