煙が立ち上る現場を心配そうに見詰める通行人=8日午後2時40分、富山市総曲輪2丁目

  ●中心市街地「信じられない」

 昼下がりの富山市総曲輪に黒煙が立ちこめた。8日に中心市街地で発生した火災では創業半世紀を超える喫茶店が全焼し、大勢の買い物客や周辺の店舗関係者らがすすを浴びながら心配そうに消火活動を見守った。常連客は「信じられない」と絶句。連絡が取れていない店主の妻の安否を心配する声が相次いだ。

 「(妻が)逃げ遅れてしまった。声を掛けたが、分からなかったかも知れない」。全焼した「珈琲舎さいほん」店主の久々湊哲治さんは沈痛な表情で言葉を絞り出した。正午前、2階にいた妻にコーヒーを渡した際に顔を見ていたという。

 出火原因については「厨房で油の受け皿に火が入り、水にぬれたぞうきんをかぶせたが消えなかった」と説明した。

 出火当時店内にいた会社経営真田進さん(79)=富山市奥井町=は火事が起きる瞬間を目撃。久々湊さんが厨房のガス台を掃除していたところ火が上がったとし「2分くらいで店内は煙でいっぱいになった。逃げるほかなかった」と声を震わせた。店主とは同級生で「奥さんが心配だ」と語った。

 珈琲舎さいほんは1970年創業で久々湊さん夫妻が長年切り盛りしてきた。

 近くで美容室を営む田辺清子さん(84)は「50年来のご近所さん。マスター(久々湊さん)も『80歳になったらやめんなん』と言っていた。さみしい」と残念そうに語った。40年ほど前から常連のダイニングバー経営、大島久輔さん(69)は「マスターも奥さんも気さくな人。定食がおいしいと評判でいつも繁盛していた。信じられない」と肩を落とした。

 現場周辺は総曲輪通り商店街のすぐ近くで、ビジネスホテルや飲食店などが隣接していた。

 現場北側のビジネスホテルは宿泊予約客を市内の同じ系列のホテルに紹介する対応に追われた。埼玉県深谷市から訪れた30代男性は「こんなことが起きるなんて驚いた」と困惑した。

 西に約50メートルの距離にある認定こども園徳風幼稚園は安全確保のため、スクールバスの運転を取りやめ、保護者に子どもを迎えに来るよう要請。息子を迎えに来た女性(38)は「幼稚園からのメールで火事が起きたと知ってびっくりした」と話した。

 富山市の総曲輪通り商店街周辺では2006年6月に10店舗が燃える大規模火災が起きている。

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