石川県内の神社が左義長に持ち込まれる「ごみ」の対応に苦慮している。15日に営む予定の白山比咩神社(白山市)では正月飾りなどの縁起物に紛れて、今年も電話帳、雑誌、ぬいぐるみなどが確認され、職員が分別作業に追われている。過去は位牌が置かれていたケースもあった。趣旨にそぐわない品は持ち込まないよう呼び掛けるが、瓶やプラスチック製品の「投棄」は後を絶たず。関係者は「何でもかんでも燃やす行事じゃない」とこぼす。
●過去に位牌も
白山比咩神社の左義長祭は駐車場に高さ約10メートル、直径約6メートルの大きな「どんど」が組まれ、燃え上がる炎に1年の無病息災を願う。例年、年末から1月15日まで、境内に収集所を設け、お守りや書き初めなどを受け入れている。
左義長はしめ飾りなどで迎えた神様を、焼くことで見送るという意味があるとされる。白山比咩神社によると、金属製の鈴、石製の数珠など燃やせないものや、ミカン、干し柿などは対象外。ただ、夜間は無人となるため、瓶入りのお神酒などを置いて帰る人が少なくないという。
「不要の物を入れる心無い方が有り、困惑致しております」。境内には、こう記された看板が設けられている。しかし、「家庭ごみ」は減ることはなく、担当者は「ごみの日に処分するしかない」とため息をつく。
「左義長で焼いてもらえば良いことがあると、インターネットで見た」と古い財布を持ち込む参詣客もいるという。職員は「無責任なネットの言説を真に受けないでほしい」と話す。
石川県神社庁によると、他の神社でも収集場所に対象外の物を持ち込む事例が相次いで確認されており、分別に時間を要するため、左義長の取りやめを検討する神社もある。
15日の左義長を前に、金沢市の尾山神社では、事前に社務所で引き取っているが、生ものや年賀状、写真などは断り、持ち帰ってもらっている。羽咋市の気多大社でも持ち込み場所に、人が常駐して対応している。
県神社庁の四柳光樹参事は「日本の伝統を後世に残すためにも、参加する人たちには理解と協力を呼び掛けていきたい」と話した。
★左義長 小正月に行われる火祭りで、どんど焼きなどとも呼ばれる。1月前半に各地の神社や公民館で、屋外に竹などでやぐらを組んで縁起物を燃やす。近年は環境に配慮して火を使わない例もある。富山市の「とやま左義長まつり」では、市民が持ち込んだ縁起物をその場で燃やさず、おはらいして処分している。