空室の増加が課題となっている市営住宅=富山市内

 ●空室増加で若年層に拡大

 富山市は新年度、低所得者向けの市営住宅で、単身入居の要件を緩和する方向で検討を進めている。現在は基本的に60歳以上が対象となるが、エレベーターがない棟の3階以上の部屋であれば年齢の条件を設けず入居できるようにする。市営住宅は空室が増加傾向で、共益費の負担増や自治活動の衰退が課題となっており、市は若い世代に対象を広げて入居率の向上を図る。

 富山市の市営住宅は、住宅困窮や所得基準に加え、原則として同居する親族がいることを入居の条件としている。単身入居は60歳以上や障害者、生活保護受給者らに限り、所得基準は年間189万6011円以下(控除後)となる。

 市は単身入居の要件について「エレベーターがない棟の3階以上」を条件に、被扶養者の学生らを除き60歳未満の入居を認める見直し案を作成した。高齢者は低層階を希望するケースが多いため、上の階で低所得の若い世代も受け入れる。市ホームページで案を公表し、1月13日まで市民の意見を募る。市議会3月定例会で関係条例の改正案を提出する方針だ。

 低所得者向けの市営住宅は昨年4月1日時点で489棟、4362戸あり、入居率は新規募集を停止している部屋を除き76・9%で、10年前の90・2%から大きく低下している。エレベーターがない棟の3階以上の部屋は1100~1200戸を数える。

 市によると、入居率の低下は民間賃貸家賃相場の下落や住宅の老朽化による魅力低減が理由とみられ、特に郊外部や中山間地域で空室が目立つ。全体の約4割に当たる100戸超が空室となっている団地もある。

 入居者が増減しても共用の廊下や階段の電気料などはあまり変わらないため、空室が増える団地では1世帯当たりの負担が増している。団地の活力の低下も懸念され、住人から「入居者を増やしてほしい」との声も聞かれるという。

 市の担当者は「これまで対象外だった人にも入居機会を提供し、市が所有する住宅ストックの有効活用や団地の活性化につなげたい」と話した。

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