記者に肌が日焼けしていると指摘された馳知事=昨年12月6日、県庁

 「馳劇場」の予兆は数多くあった。長年の習慣であるトレーニングは昨秋頃から格段に頻度が増加。県議会の一般質問がある日も早朝からジムに通って体を絞り、丹念に肌を焼いていた。知事室の訪問客に「まだ現役。もうすぐ試合します」と、うっかり「予告」したことも。3月で知事就任から1年。「今年は好き勝手にやらせてもらう」という宣言とも受け取れる年始のパフォーマンスとなった。

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 「知事は本当に出る気なのか」とひそかに気をもんでいた徳田博副知事は、北國新聞社の取材に「けがをされなかったことに正直ほっとしている」とコメント。「出場にはいろいろな見方があると思うが、知事自身がさまざまな観点から判断された結果だと受け止めている」と言葉を選んだ。

 知事派ベテラン県議の福村章氏は「けがでもしたら大変だから出ない方がいいとくぎを刺していた。本人も『出ない』と答えていたが、あの知事のことだからひょっとすると、とは思っていた」と語った。

 周囲では出場に肯定的、否定的両方の意見が聞かれるとし、「功罪相半ばだろう。当初予算案編成でも気力、体力を十分に発揮してほしい」と注文した。

 会場では東京在住の西垣淳子副知事、光永祐子企画振興部長が観戦した。知事自身が来場を呼び掛けたという。

 12月時点では、プロレスの試合に出場するのかという本社記者の問いに「全くそういうことはありません」と否定していた馳知事。関係者によると、県内で大雪や災害などが発生した場合は欠場し、代わりの選手が出場する段取りになっていたという。だが、仮に大けがを負って公務を休むような事態になれば、12月29日から1月3日まで休暇中とは言え、知事本人が出場を判断した責任を問われることにもなりかねなかった。

 実際、県民からは「知事は24時間公人なのに、行動が軽すぎる」「知事が裸で戦うのは見苦しい」といった批判も出ている。このようなリスクを懸念してか、知事の個人後援会「銀河の会」幹部は、事前に「出場したら(幹部を)辞める」と告げていたという。馳氏を国会議員時代から支える女性秘書も「出たら事務所を辞める」と迫っていた。

 富山県の新田八朗知事は「昨年のうちから、『もしかしたら盟友のために元日にリングに上がるかもしれない』と本人から聞いていた」と明かした。その上で「友情に厚い方ですから驚いてはいません。見事勝利とのこと、おめでとうございます」と語った。

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