猛烈な雨に梯(かけはし)川が氾濫し、警戒レベルが最も高い避難情報「緊急安全確保」が全域に発令された小松市では4日、避難所に身を寄せた住民らが、泥水に覆われていくわが町の様子に立ち尽くし、見えない被害状況に不安を募らせた。川からあふれた濁流に車ごとのまれた女性は九死に一生を得、「あっという間に流された。車内に水が入り、もう駄目だと思った」と恐怖を語った。
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「恐怖しかなかった。まさか自分がこんな事態に遭うなんて」。小松市大領中町の蜂谷せい子さん(53)は川からあふれた水に襲われ、車に乗ったまま約2キロ流された。
午前11時10分ごろ、勤務先の西尾地区滞在交流施設(観音下町)から松東みどり学園に通う14歳の次女を迎えに行く途中だった。
1人で乗用車を運転し、郷谷川沿いの国道を走っていた。布橋町付近で道路の一部が冠水していたが、他の車とともに進入。すると突然、川の水があふれて道路は水浸しとなった。
「流れが速くて、ドアから逃げるとか考える暇もなかった」と蜂谷さん。車は浮き、ハンドルも効かなかった。流木やガードレール、他の車などにぶつかったり、止まったりしているうちに、車内に水が入った。「このままだと死んでしまう」。気が動転し、一時は死を覚悟したという。
浸水は腰の上で止まり、車も水かさが浅い場所でストップしたところで、消防隊に救助された。次女がいる松東みどり学園で一時避難した後、自宅に戻った蜂谷さんは「流された時はもう駄目だと思った。生きていることが不思議な感じ」と語った。
小松市では市内全域で道路の冠水が複数発生。中山間地や街中で道路が通行止めとなった。夕方には帰宅する車が幹線道路に迂回し、渋滞を引き起こした。市中心部の国道360号園町交差点付近では30センチ程度の水深があった。
避難所となった中海中では、中海こども園の園児や職員も昼食を中断して駆け込んだ。片桐真二園長(62)は「園舎から見える梯川の水位が急に増えて、すぐに避難した」と話した。
宮橋勝栄市長は「どれだけの被害が出ているのか分からない。一日も早い復旧に取り組む」と話した。
●自衛隊50人救助活動
陸上自衛隊第10師団は災害派遣要請を受け、金沢駐屯地の第14普通科連隊を小松市に派遣した。50人がボートを使って住民の救助活動に当たった。