スケートボードの女子ストリートで技を繰り出す中山選手=ローマ(AP=共同)

主要国際大会で初の頂点に立った中山選手(中央)。2位の西矢椛選手(左)と3位の織田夢海選手とともに笑顔を見せた(AP=共同)

 ようやく手にした「世界一」に、長い黒髪をトレードマークとする17歳の笑顔がローマではじけた。スケートボード・ストリートのパリ五輪予選対象大会開幕戦最終日、10代の日本勢が激しい優勝争いを繰り広げる中、富山市出身の中山楓奈選手は勝負強さを発揮し、逆転で頂点に立った。「乗りたい技に乗れたから、すごく良い思い出になった」。普段はクールな「大和撫子(やまとなでしこ)」が相好を崩し、歓喜の余韻に浸った。

 銅メダルを獲得した東京五輪の予選大会は6位が最高だったが、五輪で表彰台に上がってからは高いレベルを安定して維持している。今大会の初戦となった準々決勝、準決勝を首位で突破し、好調をキープして決勝に臨んだ。

 それでも心配ごとは尽きない。父洋志さん(45)によると、決勝前に電話で話した中山選手は、一発技を競う「ベストトリック」でどんな技を出すかを悩み、準々決勝前の練習では激しく転倒して気持ちが一時落ち込んでいたという。ただ大技「ノーズブラントスライド」については縁石を使った新しい形を「みんなに披露したい」と前向きで、洋志さんは「悔いのない滑りを」と送り出した。

 決勝は、5本のうちハイスコア2本の得点が採用される一発技の1、2本目で、得意の大技「フロントサイドKグラインド」に連続で失敗して7位。「すごく焦った」というが、3本目も諦めず挑戦した。下に傾く長い手すりに、前部車輪の金具部分を斜めに掛けて滑らせる代名詞の技を今度は見事に成功。全体最高の91・92点をマークして勢いに乗った。

 4本目は跳び上がりながら体をひねって板の前部で縁石に乗り、板を立てたまま滑り降りる「ノーズブラントスライド」に成功。練習で一度も決まらなかったという難技を本番で決めて首位に立ち、逃げ切った。

 これまで世界最高峰のストリートリーグやXゲームでは表彰台に上がっても勝てなかったが、準々決勝からトップを譲らなかった今大会は風格さえ漂った。

 スケートボードのストリートは、日本勢を中心に女子のレベルは高まるばかり。慢心とは無縁で「パリ五輪までに、もっと技を増やしていけたら」とさらなる成長を期した。

 洋志さんは大会中、娘の変化を感じ取った。これまでは「感情を表現しない方が格好良い」との思いがあったが、今回は技を決めると両手を挙げ、観客を沸かせる姿があった。「会場を盛り上げると得点につながるかもしれない。助言をしっかりと実践し、精神的な成長を見た」と喜んだ。

  ●「世界一」に地元歓喜

 中山選手の快挙に、地元でも歓喜の輪が広がった。

 龍谷富山高の井上浩一校長のもとには4日午前5時半ごろ、中山選手からSNSでメッセージが届いた。「1位でした」。吉報を受けて早速、同校は五輪銅メダルを祝って掲げている横断幕の新調や、パネルの更新に向けて準備を始めた。井上校長は「五輪3位も素晴らしいが、今回は世界一。すごいことをやってくれた」と手放しで喜んだ。

 練習拠点の富山市ストリートスポーツパークでは、幼少期に指導した市アクティブスポーツ協会の竹島英樹副会長が決勝に臨む中山選手について余裕のある雰囲気だったと振り返り「失敗しても諦めず、難しい技を成功させた姿に感動した」と話した。練習していた射水市中太閤山小4年の坂田初音さんは「楓ちゃんは練習の時、いつも一生懸命だった。優勝してすごくうれしい」と声を弾ませた。

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