珠洲一帯が大きな揺れに見舞われた19日、住民からは「やっぱり大地震が来た」「これ以上は勘弁して」と悲痛の声が上がった。多くの民家や店舗では棚の食器や瓶などが落下して割れ、住民が片付けに追われた。
「まさかこんな地震が来るなんて。突然だとやっぱり怖い」。野々江町の自宅で大きな揺れに襲われた池谷内吉光さん(71)は声を震わせた。池谷内さんの近所では塀が倒れたり、壁が崩れたりし、近所の船小屋も傾いたという。
飯田町の「わかやま酒店」では100本近い酒瓶が棚から落ちて割れ、アルコールのにおいが漂った。棚を固定するなど対策を講じていたが、苗加康子代表(42)は「今までで一番大きい被害だ。20日も片付けに追われそうだ」と肩を落とした。「ろばた焼あさ井」(飯田町)でも、皿など60枚、常連客のボトルが割れた。
蛸島町の市珠洲焼資料館では、公開されていた珠洲焼約50点のうち、半分ほどが倒れた。大半がガラスケース内にあって落下は避けられたが、2階展示室の壺1点が粉々に砕けた。
「津波が押し寄せたら、ひとたまりもなかった」と話すのは、海岸近くに住む穴田千代治さん(76)=正院町正院。1993年に起きた能登半島沖地震と同じ大きな揺れを感じたとし「当時は液状化し、地面から浮き上がった建物もあった。津波で高齢者はすぐに逃げるのが難しいので、これ以上の地震は勘弁してほしい」と話した。
正院町正院の西村貞範さん(81)方では、ブロック塀が倒れ、一部が市道に散乱した。西村さんは「地震が夜でなかったのが不幸中の幸い。知らずに通り掛かっていたら、けがをする人がいたかもしれない」と表情を曇らせた。正院小の図書室では本棚から書籍が落ちた。
能登に訪れていた観光客にも衝撃が走った。山梨から訪れた介護職員鈴木正人さん(66)は地震発生時、狼煙町の禄剛埼灯台につながる山道を歩いていた。「まさか旅行中に地震が起きるなんて。揺れで山がぐにゃぐにゃしていた」と声を震わせた。
笹波町の女性(87)は納屋で洗濯中に大きな揺れに見舞われて転倒、左手首を骨折した。珠洲市総合病院で手当てを受け、「急に大きな揺れが来てなんや分からんうちに倒れとった。命が助かっただけ良かった」と疲れ切った様子で話した。