排水機場を整備するため、切られることになった桜並木=内灘町湖西

満開となった母恋街道の桜並木=2020年4月

伐採予定地

 石川県金沢、津幡、内灘3市町の河北潟堤防沿いに広がる桜並木が6月、一部伐採される。北陸農政局が干拓地の排水機場を新たに整備するためで、内灘町湖西の約100メートル区間で最大50本が切られる。「母恋(ははこい)街道の桜」として親しまれてきた桜並木であり、住民からは惜しむ声が上がっている。

  ●豪雨に備え

 桜並木は津幡町の湖南大橋から内灘町に入る河北潟堤防沿いの4・5キロ。観桜期には一直線に延びる桜のトンネルを通ろうと大勢のドライバーが訪れる名所で、内灘町は4月に花見客用の駐車場を整備したばかりだった。

 桜が切られるのは、内灘排水機場の移設地周辺で、既存の排水機場から約350メートル東に位置する。北陸農政局は2019年から、老朽化した排水機場9カ所の更新を進めており、その一環となる。

 北陸農政局河北潟周辺農地防災事業所によると、新しい排水機場は敷地面積約6千平方メートルで、並木道の下に河北潟につながる排水路を通す。排水量は従来の毎秒17・64トンから25・6トンに増強される。6月に着工、27年3月までに完成する。

 内灘排水機場のほか、金沢市湖南町にある金沢排水機場の更新も予定しており、その際も桜を伐採する必要があるという。

 近年、集中豪雨が相次ぐ中、畑の浸水被害を防ぐ排水機能の強化は干拓地の酪農家にとって死活問題で、同事業所の担当者は「農作物の県内一大生産地である干拓地を守るために工事は避けられない。理解してほしい」と話した。農政局は工事後に成木の植え直しを検討している。

 桜並木を整備するきっかけとなった津幡町の主婦山本節子さん(83)は「干拓地が良くなるために仕方ないが、やはりさみしい」と残念そうに話した。内灘町の川口克則町長は「町としても桜を植え直し、名所を維持したい」と述べた。

 ★母恋街道の桜 津幡町の山本節子さんが末期がんの母親を看病するため、入院先の金沢医科大病院まで車で通い続けた道。母親が亡くなる4カ月前の1998年1月、山本さんが金沢市に手紙を送り、「人生でつらい思いをする人の支えをつくってほしい」と桜並木づくりを提案。道を管理する3市町が山本さんの思いをくみ、同年11月に桜の植樹を始め、約千本のソメイヨシノが植えられた。

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