新生児が死亡する医療事故が起きた市立輪島病院=輪島市山岸町

 輪島市の市立輪島病院で昨年6月、産科医の誤診で新生児が亡くなった医療事故を受け、石川県は産科医を養成する金大や金沢医科大、産科の病院がある輪島、珠洲両市の実態調査に乗り出す。奥能登2市2町は常勤産科医が輪島病院の1人のみで、慢性的な医師不足が事故の遠因との見方もある。県は実情を把握した上で大学病院からの派遣の可能性など対策の協議をスタートさせ、安心して出産できる環境づくりを目指す。

 馳浩知事は9日、「県内の医師の適正な確保と配置について幹部に指示を出した」と説明。「どういうふうに(関係機関との)連携、調整ができるのか検討していく」と述べた。県庁で始まった県6月補正予算案の知事裁定に先立ち、記者団の質問に答えた。

 県によると、県内の産科医数は、最新の集計となる2020年12月末時点では116人で、近年は減少傾向が続いている。

 加えて、金沢とその周辺自治体に勤務する医師が多く、奥能登では19年12月に珠洲市総合病院から常勤産科医がいなくなり、市立輪島病院の1人だけとなった。

 他の診療科に比べ、訴訟リスクが高いとされる産科は若い医師から敬遠されがちで、金大、金沢医科大でも産科医になるのは年間数人程度にとどまっている。県は、金大や金沢医科大の実態を聞き取り、産科を目指す学生を増やす後押しができないかなどの検討を進める。

 馳知事は9日、産科医不足に関して「輪島病院に限った問題ではない。県全体の課題という認識を持っている」とも強調。3月の知事選で能登の振興策の一つに「周産期医療センター」の整備を掲げており、県は自治体の意見を取りまとめ、能登の産科医の脆弱(ぜいじゃく)な配置体制を補う仕組みづくりを含め、中長期的に県全体で産科医を確保するための具体策を模索する。

 ★市立輪島病院の新生児死亡事故 昨年6月、主治医の男性産科医が、出産前に胎盤が子宮からはがれる「常位胎盤早期剝離(はくり)(早期剝離)」を早産と誤診し、胎盤の剝離を進行させる陣痛促進剤の投与を続けた。新生児はぐったりした状態で産まれ、金沢市内の病院に転院したがその後に死亡した。輪島市が全面的に責任を認め、遺族に損害賠償金5825万円を支払い示談する。

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