伊藤洋昭さんの支援に感謝する横断幕を持つトーゴの子どもたち=2021年12月(共同)

 貧困国の一つ、トーゴの子どもたちを助けようと、名古屋市に住む79歳の男性が奔走している。急ごしらえした段ボールの“マスク”で口を覆う姿に衝撃を受け、手探りで支援を模索。がんを患い体力は衰えつつあるが、「生きている限り続けたい」と決意を口にする。

 名古屋市中川区の自営業伊藤洋昭さんは昨年9月、インターネット上の画像に目を奪われた。切り抜いた段ボールをマスク代わりに、真っすぐレンズを見つめる7人の子ども。新型コロナウイルス対策とみられるが、硬い段ボール製では効果は期待できない。栄養失調なのか、おなかはぷっくり膨らんでいた。

 「切なくて、たまらなくなった」。どこの国の子どもか分からず、六十の手習いで始めた英語で、貧困国とされるアフリカの20カ国以上の在日大使館などに支援を申し出るメールを送り続けた。

 一般人が突然送ったメールに反応は乏しかったが、トーゴの在日本大使館から「孤児院のために活動している非政府組織(NGO)がある。連絡してみてはどうか」と返信があり、現地とやりとりを始めた。

 昨年12月、ポケットマネーで購入した子ども用マスク1600枚を発送。文房具やおもちゃなどと合わせてトーゴの孤児院や貧困世帯に配られた。白いマスクを着け、伊藤さんの名前が書かれた横断幕を囲む子どもたちの写真や動画が手元に届き、「本当にうれしくて感激した」という。

 伊藤さんは40代で起こした事業が軌道に乗ると、「もうけた分は社会に対して何かしないといけない」と、児童養護施設への寄付や慰問を始めた。第一線を退いた2016年に膵臓がんと診断されて手術を受け、その後は抗がん剤の投与を受けずに慈善活動を続けている。

 「体力も落ち、自分がいつどうなるか分からない」と伊藤さん。活動への協力は求めておらず、今後も一人でできる範囲の支援を続ける考えだ。その一方で、「アフリカの子どもはマスクを手に入れられない現状がある。そういうことが社会に知られることで支援が増え、子どもたちが少しでも元気になればうれしい」と語った。

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