振り袖を準備する照子さん=小松市安宅町の瀬戸家

 江戸末期から明治にかけて廻船(かいせん)業で財をなした小松市安宅町の旧北前船主「瀬戸家」で、保管されていた昭和初期の婚礼用の振り袖が再び晴れ舞台に上がる。先代当主の妻が83年前に着用した花嫁衣装を、1月に成人式を迎えるひ孫が身にまとう。鮮やかな赤色の振り袖は豪華絢爛(けんらん)な刺しゅうや染め付けが施されており、舟運で栄えた往時の歴史とともに世代を超えて受け継がれる。

  ●目立った傷みなく

 北前船は江戸、明治期に大阪から北海道まで瀬戸内海や日本海を経由して物資を運んだ帆船のことで、安宅も寄港地の一つだった。安宅は2018年、「北前船寄港地・船主集落」として日本遺産に認定されている。

 振り袖は、先代当主の妻俊幸(としこ)さん(享年78歳)が1938(昭和13)年、瀬戸家に嫁入りする際に持ち込んだ。赤色と黒色の2着が残っており、いずれも鶴や松竹梅、多彩な絵柄の扇子が色とりどりに描かれ、門出を祝うにぎやかしいデザインとなっている。

 小松を代表する船主だった瀬戸家では、びょうぶや額など調度品が多く保管されている。現当主の妻照子さん(75)によると、振り袖は他の家財とともに大切に保管されており、年に1回、蔵から出して風通ししている。振り袖に目立った傷みや色あせた箇所はなく、美しい状態を保っている。

 俊幸さんのひ孫に当たるめろんさん(20)=都内在住=が来年1月に成人式を控え、照子さんに振り袖の持ち合わせがないか連絡がきた。照子さんは保存状態の良い俊幸さんの振り袖を提案したところ、式で着用することが決まった。

 めろんさんは俊幸さんが亡くなった後に生まれており、照子さんは「80年以上前に自分が着た振り袖を、ひ孫に着てもらえるなんて、(俊幸さんは)きっと喜んでいると思う」と目を細めた。

無断転載・複製を禁じます