スパイクタンパク質がACE2に結合する際の模式図(リチャード・ウォング教授提供)

  「高速原子間力顕微鏡」活用

 金大ナノ生命科学研究所などの共同研究グループは7日、金大が独自開発した高速原子間力顕微鏡を使い、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の構造変化や動態の観察に世界で初めて成功したと発表した。オミクロン株など変異株のスパイクタンパク質の観察も高速原子間力顕微鏡で可能になるとみられ、新型コロナの新たな治療法の開発につながると期待される。

 新型コロナウイルスは、ウイルスの表面上にあるスパイクタンパク質が「アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)」に結合することで、細胞内へ侵入する。侵入を阻止するためにはスパイクタンパク質の構造や動態の解明が重要だが、詳細は分かっていなかった。

 スパイクタンパク質は球状の頭部と柄のような部分で構成される。グループが高速原子間力顕微鏡でスパイクタンパク質を観察したところ、頭部の形状が変化し、高温になると動きが鈍くなることが分かった。

 さらに細胞間の情報伝達を担う「細胞外小胞」と、スパイクタンパク質の作用を調べた結果、ACE2を発現した細胞外小胞はスパイクタンパク質と結合し、その機能を失わせることも突き止めた。

 このことから、グループはACE2を発現した細胞外小胞が新型コロナウイルスを中和する薬剤になり得ると結論づけた。

 キイシヤン・リン特任助教、リチャード・ウォング教授らが共同研究した。研究成果は、国際学術誌「ジャーナル・オブ・エクストラセルラー・ベシクルズ」のオンライン版に掲載された。

 ★高速原子間力顕微鏡 探針と試料の間に働く原子間力を基に、分子の形状をナノメートル(ナノは10億分の1)レベルで可視化できる。金大が世界で初めて開発し、製品化された。現在、国内では東大や京大、名古屋大などでも活用される。

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