「最後の赤ちゃん」に優しいまなざしを向ける杉浦院長(中央)=光が丘3丁目の杉浦クリニック

 1988(昭和63)年に開業し、地域の産婦人科医院として親しまれる「杉浦クリニック」(金沢市光が丘3丁目)が30日、分娩(ぶんべん)の受け入れを終えた。多くの赤ちゃんの産声を聞いてきた院長の杉浦幸一さん(73)は、自身の年齢と分娩数の減少を理由に苦渋の決断を下した。外来診療は今後も続けることにしており、杉浦院長は「寂しくなるが、母子を温かく迎えたい」と静かに語った。

 26日深夜、杉浦クリニックの最後となるお産で、眞島結衣ちゃんが元気な産声を上げた。立ち会った杉浦院長は「とても元気な赤ちゃん。成長が楽しみだ」と母子に優しいまなざしを向けた。

 「お母さんが常にリラックスできるように」とクリニックの運営方針を掲げてきた杉浦院長。クリニック近くに住む結衣ちゃんの母は1日に退院予定で、「院長やスタッフの方のケアが手厚く、安心できた」と笑顔を見せた。

  ●親子2代で世話に

 杉浦クリニックは88年の開業から地域に根差し、その年に県内で初めて母乳外来を開設した。家族の勧めで選ぶ妊婦も多く、これまでに親子2代でお世話になったケースもある。クリニックで生まれたスタッフも働いている。

 ピーク時の分娩数は月に50~60人を数えたが、近年は少子化などで、月20件ほどに減っていた。コロナ禍の影響も受けた。

 当直や急患の対応などが多く、「激務」とされる産科医。杉浦院長も1カ月の半分以上、クリニックに泊まり込むこともあった。しかし、出産を終えた人からの感謝の言葉や、成長した子どもの姿を見るのをやりがいに、常に現場に立ち続けてきた。北國新聞では、コラム「診察室の窓」を連載した。

 クリニックでは外来診療を続け、分娩室もそのまま残す。杉浦院長は「自分が取り上げた子が大きくなって、顔を見るのが何よりうれしかった。これからも地域医療に貢献してきたい」と話した。

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