日本一に輝き、伊藤コーチと抱き合って喜ぶヤクルト・奥川(右端)。左端は高津監督=ほっともっと神戸

 20年ぶりにプロ野球の日本シリーズを制したヤクルトで、投手陣の柱として貢献したのが、2年目の奥川恭伸投手(20)だった。一度も故障で戦列を離れることなく、戦い抜いた初めてのシーズン。「レベルの高い舞台でプレーできていることが楽しくて仕方がない」。純粋に野球を愛し、自らを高めてつかんだ日本一の栄冠だった。(運動部長・杉山圭一郎)

【本記 ヤクルト20年ぶり日本一】

 今月10日、巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルで開幕投手を任された。初の大舞台にも背番号11は堂々と打者に向かっていった。針に糸を通すような制球でプロ初完封。CSのMVPにも選ばれた。

 「奥川劇場」から一夜明けた神宮球場。新型コロナウイルスの影響で、対面の取材機会はなかったが、ヒーローの表情を一目見ようと、球場入り口で待った。第2戦を4時間後に控えた午後2時前、クラブハウスからリュックサックを背負って出てきた奥川投手は、私の姿を見つけると、ほほ笑みながら近寄ってきた。

 会って話すのは、新年あいさつで北國新聞社を訪れた1月4日以来だった。帽子を取って「お久しぶりです」。礼儀正しさは高校時代と変わらない。前夜の力投を祝福すると「さすがに疲れました。でも、楽しかったです」と満面の笑み。スタンド観戦した両親が喜んでいたことを伝えると、「昨年のデビュー戦はいい姿を見せられなかったので、親孝行できてよかった」と語った。

 20日のオリックスとの日本シリーズでも開幕投手で登場。7回1失点で勝利投手の権利を持ってマウンドを降り、中継ぎ投手がサヨナラ打を浴びて勝利は消えたものの、沢村賞を獲得した侍ジャパンのエース、山本由伸投手と互角に投げ合い、力が「本物」だと証明した。

 1年目はけがでスロー調整が続いた。厳しさを体感しながらも、大きな飛躍を遂げた2年目は「高校と違って、レベルの高いプロ選手を相手に長いイニングを投げるのは大変です」と本音を漏らしたが、「勝っても負けても、本当に毎日が楽しい」と充実のシーズンを送ってきた。

  ●喜びの輪控えめに

 3勝2敗で迎えた第6戦。ヤクルトは延長十二回の熱戦を制し、勝負を決めた。奥川投手はマウンドに広がる歓喜の輪の一番外で日本一を味わっていた。控えめな姿には、チームに貢献できた充実感よりも、もっと貢献できたという思いがにじんでいるようだった。3年目は、どこまで進化するのか。期待は膨らむばかりだが、その前にどんな顔で故郷に「凱旋(がいせん)」するか楽しみだ。

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