大みそかでの引退を決めた髙田さん=有松4丁目

 「加賀料理の将来を担う男」としてかつてテレビ番組「料理の鉄人」に出演した割烹(かっぽう)利久(りきゅう)(金沢市有松4丁目)の髙田和名利さん(65)が、今年限りで第一線を退く。旧「つる幸」で腕を磨き、30年にわたって金沢の和食文化を支えてきたが、加齢による体力の衰えで引退を決めた。現役最後の仕事は来年のおせち作りで、「最後に自分の心と技を見せたい」と意気込んでいる。

 金沢生まれの髙田さんは子どもの頃から料理人を志し、高校を卒業してからすぐ京都で10年間修業した。その後、つる幸創業者・河田三朗さんのもとで研さんを積み、35歳で独立して割烹利久を開いた。

 「料理の鉄人」に出演したのは41歳の時。番組スタッフから依頼があり、河田さんに背中を押されて出演を決めた。白子をテーマにイタリア料理の鉄人と戦って引き分け、後日、延長戦として行われたボタンエビ対決を制した。

 髙田さんを「加賀料理の将来を担う男」と紹介した放送は反響を呼び、店には地元客が押し寄せた。「番組では、自分が満足するもんを作ろうと、ただそれだけだったけど、人の見る目が変わった。人生も変わりました」と髙田さん。番組をきっかけに常連になる人もおり、忙しさは増した。

 店では早朝に起床して仕入れに出掛け、夜遅くに店を閉める。客に合わせて献立を変えるなど、きめ細やかなもてなしを心掛けてきたが、3年ほど前から体力の衰えを感じるようになった。若手の感性について行けなくなったという感覚もあり、自身は大みそかをもって引退し、店は利久で修業経験のある藤井寿人さんに任せることにした。

 厨房(ちゅうぼう)に立ち続けて30年、味について大事にしてきたことは、シンプルに「食べておいしいこと。講釈はいらない」。最後に作るおせちには、「河田さんに唯一、ほめられた」という「ぶどう豆」や、今では作れる料理人が少なくなった「小川漬」など、集大成の品を詰め込む。

 髙田さんは「せわしなくて、充実した30年やった」と笑って振り返り「何十年も店に通ってくれる人がいて、幸せだった。おせちには、今までの思いをぶつけます」と話した。

  金沢楽座で販売

 おせちは金沢ケーブルが運営するネット通販「金沢楽座」で販売する。

 ★料理の鉄人 1990年代に放送された料理対決のテレビ番組。「鉄人」と呼ばれる料理人に、毎回ゲストの料理人が挑む構図で展開され、プライドを懸けた真剣勝負で人気を博した。県内からは、山中温泉出身の料理人・道場六三郎さんが和食の「鉄人」として出演した。

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