満開の藤の花を描いた鉛筆画に見入る来場者=金沢21世紀美術館

 「超絶技巧を超えて吉村芳生展」(北國新聞社主催)は22日、金沢21世紀美術館で開幕し、鉛筆による細密描写で知られる画家吉村芳生さんの画業をたどる約300点が来場者を迎えた。満開の藤の花を描いた代表作など、技巧や見た目の美しさを超えた作品が存在感を放ち、鑑賞者が息をのんで見入った。

 藤の花を題材とした「無数の輝く生命に捧(ささ)ぐ」は、花の一つ一つに東日本大震災犠牲者の魂を託した作品となる。花に包まれたかのような荘厳な作品が来場者の心を打った。

 吉村さんは「遅咲きの画家」として57歳だった2007年に現代アートの分野で再評価され、13年に亡くなった。生涯にわたってリアリズムを追求した吉村さんの回顧展となり、初日は監修した冨田章東京ステーションギャラリー館長が作品解説した。

 初期のモノクローム作品では、ただひたすらに金網を写した全長17メートルのドローイングや、ジーンズの布の織り目までもを描き込んだ鉛筆画が並んだ。「新聞は社会の肖像である」とする吉村さんが、新聞の文字や写真を克明に写し、自画像を重ねた作品も紹介され、来場者が見入った。

 作品の多くは2・5ミリのマス目を描き、写真をもとに、ひたすら色や濃淡を描き写していく独特の手法で制作されている。写真のようにリアルな作品を描く作家はあまたいるが、冨田館長は「吉村氏はあえて手間のかかる根気のいる作業を選んでいたことが謎であり魅力。描くことの意味を見いだそうとしていたのではないか」と語った。

 開場式では、主催者を代表して温井伸北國新聞社社長、吉村さんの長男で画家の大星さんがそれぞれあいさつし、酒井雅洋県県民文化スポーツ部長、山森健直金沢市文化スポーツ局長が祝辞を述べた。会期は11月21日まで。入場料は一般千円、中高生700円、小学生500円となる。

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