金沢市大浦小で開かれた式典に出席した(右から)馳氏、谷本知事、山野市長=9月18日、同市大浦町

再1区

 4氏が争う1区は、自民新人が来春の知事選出馬を表明した前職馳浩氏と二人三脚で選挙活動を展開する。候補内定から日が浅い新人にとって馳氏は心強い援軍である半面、知事選を優位に進めたい思惑が透け、谷本正憲知事の支持者には警戒感が広がる。一方、知名度抜群の馳氏が去ったことで反転攻勢に出たい野党だが、立憲民主と共産の共闘が破談となった上、日本維新の会の参戦で票の分散が懸念材料だ。

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 「私の秘書も、事務所も、そのまま小森さんに引き継ぐことになります。来年の知事選挑戦がありますので」

 先月30日に行われた自民新人の小森卓郎氏(51)の事務所開き。あいさつに立った馳氏がこう語ると、県議の一人は露骨に顔をしかめた。「馳色が強すぎる」。かえって票離れが進むとの懸念がにじんだ。

 衆参合わせて国会議員を計8期26年務めた馳氏は高い知名度を誇り、2017年の前回選では次点の倍近い11万2千票余で圧勝した。その後継となる小森氏には、陣営が掲げた9万5千票の目標を超える「それなりの勝利」(陣営関係者)が求められる。

 財務省出身、妻の父が北村茂男元衆院議員といった肩書もあり、中村勲選対本部長は「恥ずかしい票数で当選させるわけにはいかない」と強調する。

  面会拒否も

 2011年から3年間、県の部長として石川に出向していた小森氏だが、9月9日の出馬表明から40日程度しかたっておらず、一般的な知名度は極めて低い。馳氏の後押しが欠かせないのは当然と言える半面、7月に知事選出馬を表明した馳氏が目立つのを快く思わない人がいるのも事実だ。

 関係者によると、馳氏の知事選出馬の意向は、本人が意図しない形で党本部側から情報が漏れ、報道が先行した。戸惑いが広がる中、7月の会見で馳氏が「現職の後継」を自任したことに対し、身内の自民からも「谷本知事が出るとも出んとも言うとらんのに失礼や」との声が飛んだ。

 こうした経緯が、小森氏の活動にも影響を及ぼす。馳氏は企業、団体へのあいさつ回りについて「みんな大歓迎だよ」と語るが、関係者によると「馳さんが一緒なら会いたくない」と面会を断る企業や団体もある。

 小森氏が目標の得票数を超えて圧勝を飾れば、後ろ盾となった馳氏の存在感も高まる。ただ、ベテラン県議の一人は旧奥田系市議を中心にやぐらを組んだ維新の小林誠氏(44)に触れ、「馳さんが表に出すぎると、そっちに票が流れてしまうかもしれない」とこぼした。

 もう一つの焦点となるのが、知事選に出馬意欲ありとされる山野之義金沢市長の動向だ。山野市長は小森氏陣営の事務所開きに出席した一方、市長選初出馬時から支援を受ける小林氏の事務所開きに妻を出席させ、バランスを取った。

 今のところ、これ以外に山野市長の目立った動きはなく、衆院選では静観の構えを取る。知事選についても沈黙を貫く山野市長だが、県政界では「現職が出馬しなければ出てくるだろう」との見方が多い。

  野党、票分散を懸念

 一方、自民の候補予定者が馳氏から無名の小森氏となり、野党第1党の立民は息巻く。党が擁立する新人荒井淳志氏(27)が早くから準備を進めてきたこともあり、「大チャンスだ」とボルテージを上げる。

 前回選では旧民主系の元職田中美絵子氏(現金沢市議)が馳氏に大差で敗れたものの、荒井氏陣営は今回、小森氏の得票が馳氏を大きく下回ると予想。立民県連関係者は「8万5千票まで上積みできれば勝ち目はある」と皮算用する。

 ただ、亀田良典氏(72)を擁立する共産との共闘がなくなり、革新票の結集は難しい状況。さらに、自民側は「確かに小森さんは馳さんより知名度に劣るが、田中さんと荒井さんの関係にも同じことが言える」と指摘。顔と名前が売れていない者同士の争いなら、組織力に勝る自民に分があるとの見方だ。

 ある関係者は、小森氏があいさつ回りで「ああ、小林さんね」と名前を間違えられたエピソードを紹介し、「木が二つ(小林)か、三つ(小森)か。有権者はその程度の認識だ」と皮肉を込めた。認知度も関心もいまだ低い県都の争いだが、その結果は次なる戦いの図式を左右しかねない。

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