連合石川の会合で2区の候補擁立断念を表明する一川氏=金沢市内

 立憲民主党が候補擁立を断念し、自民党の前職佐々木紀氏(46)の楽勝ムードが広がる石川2区は、旧民主党系支持層の票の行方が数少ない焦点だ。前回選は前身の「希望の党」新人が5万8千票余を獲得したが、今回その受け皿は戦いの舞台に上がれず、立民県連は自主投票を表明した。選挙は盤石ながら、党三役や閣僚に抜擢(ばってき)され始めた同期を意識せざるを得ない佐々木氏にとって、党本部への最大のアピールポイントは得票数。陣営は漂流する「希望」票を取り込もうと目を光らせる。

 「時間をかけて擁立作業を進めてきたが、野党第一党として、2区で選択肢を示すことができなかった。大変申し訳なく思っている」

 15日午後、金沢市内で開かれた連合石川の執行委員会。立民県連幹事長の一川政之県議は硬い表情でこう語り、居並ぶ構成組織の代表者に向けて3秒間、深く頭を下げた。

 旧民主系勢力が2区で「不戦敗」を喫するのは2014年の前々回選以来だけに、立民の支持母体である連合石川の失望は大きい。「2区では比例票の積み重ねに力を注ぐ」と挽回を誓った一川氏に対し、連合石川の福田佳央事務局長は「構成組織の皆さんに残念なご苦労をかけることになる」と不満をにじませた。

 自民の森喜朗元首相の地盤だった2区は、旧民主系にとって小選挙区制が導入されてから一度も勝てたことがない鬼門だ。当然候補は定着せず、4年ぶりの総選挙で擁立の準備期間は十分あったにもかかわらず、今回は土俵に上がることもできなかった。

  一川氏に待望論も

 衆院任期ぎりぎりの今夏になって白羽の矢を立てた県外出身の大学生は、党本部に公認を認められず、県連の内外から待望論が出ていた一川氏自身も出馬を固辞した。結果として、2区の「自民1強」加速をアシストし、非自民系のある県議は「普通なら一川さんの責任問題やわな」と冷ややかに語った。

 かつて2区では、一川氏の父で衆院議員を3期務めるなどした保夫氏が、先代保正氏の代から続く後援会組織「一誠会(いっせいかい)」を力の源泉として森氏と対峙(たいじ)してきた。しかし、一誠会は「メンバーの新陳代謝がなく、高齢化、弱体化が顕著」(立民県連関係者)とされ、それが2区における旧民主系勢力の退潮を招いたことは否めない。

  「1万票は取りたい」

 行き場を失った立民支持層の票を、虎視眈々と狙うのが佐々木氏陣営だ。選対本部長の福村章県議は「半分は棄権。ちょっこし共産にも入るやろ。わしらは1万票は取りたいな」とそろばんをはじく。

 前回選の11万8421票超えを目指す陣営にとって、共産新人の坂本浩氏(57)との一騎打ちでは前回59・77%だった投票率が低下する可能性が大きい。得票数の維持、拡大は容易ではなく、立民票を得ることが欠かせない。

 このため、福村氏は選挙熱が高まらない中で、あえて県市議に号令を掛け、コロナ感染に配慮しながらも、出陣式などでの動員を進める考えを示す。2区内の市町支部単位で細かく日程を組み「1、3区よりも厳しく活動している」と強調した。

 岸田政権では、佐々木氏の同期で同じ細田派に所属する福田達夫氏(54)が党総務会長に抜擢されたほか、3期から3氏が入閣した。南加賀の自民県議からは「出世に差が付いたな。佐々木さんにも焦る気持ちがあるんじゃないか」と勘繰る声も漏れる。

 不祥事も多く「魔の3回生」の汚名が先行した12年初当選組にあっても、徐々に先頭集団が形成され始めている。岸田政権下で党国対副委員長、衆院議院運営委員会理事に就いた佐々木氏は「自分は人がやりたがらない場所でしっかり力を蓄えたい。ポストはまあ、いずれね」とけむに巻きながらも着実に歩みを進める姿勢を強調した。

 全国有数の圧勝が狙える今回は党幹部にアピールする好機だ。馳浩氏が国会議員を引退したことで、4選すれば県内の衆院議員の筆頭格ともなる。

 だが、熱なき選挙で選ばれたとしても、その手応えはどこか空疎ではないか。「敵」がいないからこそ、厳しい道が佐々木氏を待ち受ける。

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