並んで掲示されている西田、近藤両氏のポスター=輪島市内

 衆院が解散された14日、県内3選挙区は19日公示、31日投開票の超短期決戦をにらみ、実質的な選挙戦に突入した。各選挙区から立候補を予定する現職、新人の各陣営はどのような戦略を描くのか。議席を懸けた戦いの図式を追う。

 自民党の西田昭二(52)、立憲民主党の近藤和也(47)の前職2氏がしのぎを削る石川3区。2017年の前回選は、解散2日前に出馬表明した西田氏がわずか2110票差で勝利をもぎ取った。元職・北村茂男氏の地元輪島で大差を付けたことが鍵となったが、今回は元職の影響力が薄れた地盤で近藤氏が食い込みを見せている。

 「おい、近藤の事務所ができたぞ」

 9月上旬、奥能登の中心、輪島に近藤氏が初めて前線基地を置いたとの一報が、瞬く間に自民系市議の間を駆け巡った。

 前回選で西田氏は、当時希望の党だった近藤氏に同市で3378票差を付け大勝していた。「輪島で勝てれば3区を制することができる」と語り、「ホーム」に殴り込みをかけてきた近藤氏の影に、西田氏陣営は一気に緊張感を高めた。

 近藤氏が動きを強める背景には、引退から4年がたつ北村氏の影響力低下があるとされる。自民関係者の一人は「北村氏支持者だった人が近藤氏支持者に変わっているケースもある。西田さんが輪島で勝てたとしても僅差だろう」と厳しい表情を浮かべた。

 西田氏も手をこまねいているわけではない。8月以降、10回ほど輪島に入り、4、5千件のあいさつ回りをこなした。昨秋以来空席だった連合後援会長を梶文秋市長に要請したのも、この地で勝利する意味の大きさを意識してのことだ。

 近藤氏側も、妻が市内の1万2千軒を訪問。前回選で近藤氏に付く市議はいなかったが、今回は3人が支援に回る。

 市内には両氏のポスターが近距離に掲示されている場所も出てきた。「雰囲気は相当変わってきた」(近藤氏陣営)との感触も聞こえる奥能登の票田が、勝敗を大きく左右する。

  左右にウイング広げ

 前回選の3区の得票を12市町別にみると、7市町で西田氏が勝利し、近藤氏は5市町で上回った。前回は3区全体で5212票を獲得した共産が今回擁立を見送ったため、仮にその票が近藤氏に入れば西田氏をたやすく逆転する。

 近藤氏は「政党や政策で人を見るべきではない」と繰り返し、立民ではなく「近藤党」を自称して保守、革新双方へしたたかにウイングを広げてきた。こうした戦略には自民から「共産との関係を隠し、政権選択選挙なのに立民所属を前面に出さないのはどうなのか」との批判がつきまとうが、意に介する様子はない。

 戦略は、衆院選1週間前に市議選の投開票日を迎える七尾市にも広がる。西田氏と溝がある自民の和田内幸三県議との接近だ。

 昨年10月の同市長選では西田氏が推す現職を破り、近藤氏と和田内氏が支持した茶谷義隆氏が当選した。和田内氏に連なる勢力が市議選でも伸張すれば、七尾が地元の西田氏の足元はさらに揺らぐことになる。

 西田氏の選対入りを固持した和田内氏は衆院選について、表向き「(西田氏の)邪魔はしないが、応援もしない」と話すものの、周囲には「近藤に投票しろ」と指示しているとされる。前回はなかった自民内の火種を抱え、西田氏は地元でも難しい局面に置かれている。

  「比例も困難」一変

 一方、「衆院選は11月上旬」という大方の予想を裏切り、岸田文雄首相が10月31日の投開票を決めたことは、所属派閥の領袖(りょうしゅう)である岸田氏の総裁選勝利と合わせ、西田氏には二重の朗報だった。新政権の勢いそのままに選挙戦に突入できることになり、能登の自民系議員は一様に「いいことや」と腕をまくった。県議の1人は「西田は選挙区はおろか、比例すら難しいと言われとったが、空気が一変した」と語る。

 岸田首相の県入りを切望する西田氏陣営だが、14日時点では決まっていない。宮下正博県議は「何としても七尾に入ってほしい」とした上で、前回選で近藤氏とほぼ互角の戦いを演じ、3区の有権者の3分の1強を占める河北郡市での遊説にも期待を込めた。

 岸田首相就任の影響について、立民関係者は「安倍、菅政権と何も変わらないということを地道に訴えていくしかない」と話す。さまざな要素が複雑に絡み合い、風向きが読めない能登の戦いが続く。

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