全国展開でがんゲノム医療の促進を目指す装置=高岡市の富山県産業技術研究開発センター

 高岡の県産業技術センター、ゲノム医療普及へ 

 高岡市の富山県産業技術研究開発センターは、患者の遺伝子の変異を調べて個人に合った治療を提供する「がんゲノム医療」の普及に向け、臨床データを蓄積する装置の全国展開に産官連携で乗りだす。装置は血液中のがん細胞を自動的に捕捉、抗がん剤の投与前に効き目を判別し、治療効果を継続的に観察できる。より多くの医療機関や大学に採用されることでデータを集積し、新治療法や新薬の早期開発につなげる。

 県産業技術研究開発センターは装置の全国展開に向け、理化学機器商社「ケー・テクノ」(富山市)と連携し、30日~10月2日に横浜市のパシフィコ横浜で開催される「第80回日本癌(がん)学会学術総会」に初出展する。

 同センターの大永崇副主幹研究員が開発した装置は、樹脂メーカー「リッチェル」(富山市)と共同開発した樹脂チップを搭載。直径100ミクロンの筒が約3万個ある樹脂チップは、ポンプを使って一定速度で血液を流し込み、血中循環腫瘍細胞(CTC)を表面に付着させる仕組み。CTCを染色して遺伝子レベルでタンパク質の異常を解析する。

 従来は、チップへの血液の流し込みや染色に人手を要することが多かったが、装置は全工程をほぼ自動化したことで作業時間を2時間程度に短縮した。同種の海外製品と比べて販売価格を10分の1程度に抑え、全国の研究機関や大学が導入しやすくした。

 既に産業医科大(北九州市)に肺がんなどの臨床試験用として納入した。今後は富大と連携してAI(人工知能)を駆使した全自動装置の開発も目指す。

 国は患者ごとに異なる遺伝子情報を解析し、効果が見込める薬を探す「がんゲノム医療」の普及を推進しており、国立がん研究センターは10月4日から同医療に関する臨床データを医療機関などに提供を始める。大永副主幹研究員は「装置が普及し、さらにデータが多く集まれば新治療や新薬の早期実現につながる」と期待している。

 ★がんゲノム医療 がん組織の遺伝子変異を明らかにすることで一人一人の体質や病状に合わせた薬の選択や治療を行う。標準治療を終えたか、希少がんの患者に対し、未承認や適用外の薬から次の一手を提供することを目指す。厚生労働省は2019年、がんゲノム医療の遺伝子検査を保険適用とした。

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