優雅な踊りが繰り広げられるおわら風の盆=2019年9月、富山市八尾町上新町

おわら風の盆の中止を決めた臨時総会=富山市の越中八尾観光会館

  「子どもたちが忘れてしまう」20万人の「特需」消滅

 富山市八尾町で毎年9月1~3日に行われてきた「越中八尾おわら風の盆」について、行事の運営委員会は2日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため昨年に続き中止することを決めた。伝統を守り継ぐ地元団体は、2年連続で次世代への文化継承の機会が失われたことに危機感を示し、来年の開催を願った。県内外から例年約20万人が訪れる「おわら特需」が消え、観光関係の事業者からは落胆の声が漏れた。

  行事運営委が決定

 行事の中止は、県民謡越中八尾おわら保存会や八尾地区自治振興会、富山市などでつくる「おわら風の盆行事運営委員会」が同市の越中八尾観光会館で開いた臨時総会で、全会一致で決まった。8月20~30日の前夜祭など関連行事も全て取りやめ、深夜から未明に各町で自主的に行われる町流しも自粛を求める。

 おわら保存会長を務める金厚有豊会長は中止の理由として、規模が大きいだけに感染防止対策の徹底が難しく、膨大な人手がかかると説明。「観光客に来てほしいが、来てもらったら困るのが現実。大変残念ではあるが、こればかりはどうしようもできない」と述べた。2年連続での中止に「非常に危機感がある。子どもたちがおわらを忘れてしまう」と懸念した。

 臨時総会では、6月17日の総会で示された開催方法の案に対し、委員から感染予防対策に不安が残ると指摘があり「演技者や観光客らの安全安心を守る観点から引き続き中止すべき」との意見が出た。「練習だけだと緊張感に欠け、なかなか上達しない。発表の場をつくってほしい」と求める声も上がった。

 大勢の観光客を期待していた宿泊施設や交通事業の関係者からは中止を残念がる声が聞かれた。

 ANAクラウンプラザホテル富山(富山市)では2日時点で、9月1~3日の3日間とも全251室のうち200室超の予約が入っている。担当者によると、ほとんどがツアーや団体の予約で、おわら風の盆が目当てとみられる。

 今後、キャンセルは避けられない見通しで、担当者は「新型コロナの影響で客数が伸び悩んでおり、これだけ予約で埋まることはなかった。中止になってしまい残念だ」と嘆いた。

 県内のバス会社28社でつくる県バス協会の小竹典吉専務理事は中止決定に「ある程度は覚悟していたが、打撃は大きい」とため息をついた。

 開催期間は例年、県内外の旅行会社が県内のバス会社にツアーバスの運行を依頼する。小竹専務理事は「1年で最もバスの需要が高まるのがおわらの期間。コロナで売り上げが落ちる中、期待していた会社も多い」と話した。

 おわら風の盆は約300年の歴史があるとされ、編みがさを目深にかぶった男女が三味線や胡弓(こきゅう)の哀愁漂う音色に合わせ、石畳の町並みの中を優雅に踊る。昨年は新型コロナの影響で1945(昭和20)年以来の中止となった。

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