手際よくラーメンを盛り付ける西浦さん(手前)と妻のとし子さん=24日、金沢市片町1丁目

閉店を惜しみ、行列をつくる客

 20年「金沢の人たちに支えられた」

 金沢市片町1丁目のラーメン店「鳳凰(ほうおう)」が26日、コロナ禍を理由に閉店する。大阪出身の西浦昇さん(73)と妻とし子さん(74)が、北陸の繁華街に店を移して20年、「片町のしめの一杯」として酔客の胃袋をつかんできた。常連客は夫婦との別れを惜しみ、連日、列をつくっていて、西浦さん夫婦は「本当に金沢の人たちに支えられた」と最後の日まで思い出の味を作り続ける。

 24日午後6時、開店直前の店の前には、20人の行列ができた。L字のカウンターに客が入り始めると、とし子さんが「いらっしゃい」「久しぶり」と関西弁混じりの声で迎える。普段は口数が少なめの西浦さんは、大好きな阪神タイガースの話題になると、盛り上がった。

 メニューは主にラーメンと油そばの2種類で、2人は役割分担して手際よく料理を盛り付ける。テーブルに丼が届くと、談笑が聞こえる店内は、油が程よく絡まった麺をすする音に変わる。

 鳳凰は50年前に、2人の実家に近い東大阪市でオープンした。2001年に「温泉があり、空気のおいしい所に行きたかった」と金沢に引っ越し、店は片町に移転した。汁なしのラーメンである油そばを金沢で先駆けて売り始め、とし子さんは「金沢の人が受け入れてくれるか心配やった」と振り返る。

 店の壁には、来店客の写真が並べられ、完食した会社員や家族連れ、スポーツ選手の笑顔が所狭しに埋まっている。とし子さんは「高校生やった子が夜のきれいなお姉さんになって来てくれたり、家族ができたと写真を送ってくれたり、客一人一人に思い出がありますわ」と涙ぐんだ。

 コロナ対策の緊急事態宣言などの中では、要請に応じて時短営業や休業していたが、家族から心配する声が上がり、店を畳むことにした。

 最後の味求め列

 店先に閉店の貼り紙を出した21日からは、最後の味を楽しもうと客が続々と訪れている。感謝状をくれた常連客もいた。

 とし子さんは「最後まで感染に気を付けてお客を迎えたい」と話した。西浦さんは「阪神が調子いいし気分は上々。店閉めたら野球をゆっくり見るわ」と笑顔を見せた。

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