開店準備を進める山口夫妻=大阪市(山口さん提供)

禁煙室の内装が移設される築90年の建物=大阪市(山口さん提供)

金沢市尾張町2丁目で営業していた禁煙室の店内(山口さん提供)

  30代夫婦が今夏開店

 昨年末、40年間の歴史に幕を下ろした喫茶店「禁煙室」(金沢市尾張町2丁目)の内装を継いだ喫茶店が今夏、大阪市内でオープンする。30代夫婦が趣ある店がなくなるのは惜しいと、カウンターやいすのほか、ステンドグラスや青色のタイルも一枚残さず移設した。コーヒー一杯とカウンター越しの会話でほっと一息つける「くつろぎの空間」は看板を代えて再出発する。

 内装を譲り受けたのは「喫茶水鯨(すいげい)」の山口修平さん(31)=大阪市=と妻加奈さん(30)。2人は金沢旅行で禁煙室を訪れたことがあり、加奈さんは「内装全部がすてきで、常連客との会話が弾む店の雰囲気は自分たちの理想と重なった」という。

  無償で提供

 そんな思い出の店の閉店を知り、すぐさま内装を引き継ぎたいと申し出た。2人の熱意に押され、店主の前野玲子さん(79)や建物を管理する不動産会社が無償で提供することにした。

 現在、水鯨は大阪市内で間借りして営業しており、西区の川口居留地跡付近にある築90年の建物に移転する。禁煙室のいすの破れを補修したり、ステンドグラスを磨いたりと準備を進めている。

  看板メニュー再現

 同店では、看板メニューだったクリームソーダを再現する。大阪へ内装を移す際、店に残っていた唯一のグラスを持ち帰り、金魚鉢のようにふちが波打つ独特のデザインに似せてグラスを特注した。

 禁煙室はその店名に反して喫煙可だった。「珈琲館禁煙室 たばこの吸える喫茶店」と記された看板も移し、新店では屋外席に灰皿を置く。

 前野さんは2年前に他界したマスター克祐(かつすけ)さんとの思い出が詰まった内装が受け継がれることについて「全てひっくるめて持ち帰ってくれてうれしい。出来上がった店に行くのが楽しみ」と話した。修平さんは「店主のこだわりが詰まった喫茶店は文化財だと思う。後世に残す取り組みを続けたい」と意気込んだ。

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