山本文緒さん(ⓒ新潮社)

村山氏、林氏とオンラインで選考に臨む秋山学長(右)=金沢学院大

 金沢学院大が主催する第27回島清(しませ)恋愛文学賞は17日、山本文緒さん(58)の「自転しながら公転する」(新潮社)に決まった。山本さんにとって7年ぶりの小説となり、「平凡な人々のほそぼそとした暮らしや、出会った人と手をつなぎ続ける困難さと素晴らしさを、また正面から描きたかった。ご評価いただきましたこと、心からうれしい」と喜びのコメントを寄せた。

 受賞作は、親の介護で東京から地方都市へ戻ってきた30代の女性が、恋愛や結婚、仕事、家族の問題に迷い、悩みながら成長していく。17日、オンラインで選考委員会が開かれ、作家の村山由佳氏、林真理子氏と、秋山稔金沢学院大学長の3氏が選考した。

 会見した村山氏は「地方都市で生きる若者の閉塞(へいそく)感や経済的な不安、孤独への恐れなど、リアルな感情がきちんと言葉に置き換えられ、非常にうまく書かれている」とたたえた。

 複雑な思いを抱える恋人や主人公の人物造形の巧みさにも触れ、恋愛小説としては「自立した男女が思い合うことの意味、人を愛することが持つ意味を書き切っている」と評価した。

 今回は出版社などから20作品の応募があり、昨年度新設された金沢学院大の授業「島清恋愛文学講座」を受講する学生が3作品を絞り込み、選考委員会へ推薦した。

 贈呈式は新型コロナの感染状況を見て、日程を決める。賞金は100万円となる。

  恋に仕事に悩む30代女性が成長

 東京のアパレルで働いていた32歳の都(みやこ)は母の介護のため地元に戻り、アウトレットモールのショップ店員として働き始める。職場の人間関係、結婚相手に求められるものは何も持っていない恋人、両親の病気と続出する問題や、恋愛と結婚の現実に悩み、立ち向かいながら、自分にとっての本当の幸せを探していく。

 ★やまもと・ふみお 1962年、横浜生まれ。OL生活を経て、87年に少女小説家としてデビュー。92年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般小説に移り、99年「恋愛中毒」で吉川英治文学新人賞、2001年「プラナリア」で直木賞。受賞作は7年ぶりの新作。

 ★島清恋愛文学賞 大正時代に活躍した作家、島田清次郎(しまだ・せいじろう、1899~1930年)の顕彰を目的として、1994年に出身地の旧美川町が制定した。合併で運営を継承した白山市が2012年に廃止を決めたが、民間団体「日本恋愛文学振興会」が賞を引き継ぎ、14年から金沢学院大が運営母体となり、20年から主催となった。

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