オリジナル物語も創作
珠洲市三崎町寺家の住民有志が2日までに、昨年8月から近くの海岸に姿を見せているイルカ「すずちゃん」や珠洲に伝わるイルカ伝説を紹介するリーフレットを作った。地元の須須(すず)神社に残る伝承に基づいてオリジナルの物語を創作し、すずちゃんの写真とともに掲載した。イルカ目当てに訪れた人に配り、珠洲では古来よりイルカが神の使いとして神聖視されてきたことを知ってもらう。
リーフレットは縦約20センチ、横約40センチで「いるかの三崎詣(まい)り 獅子岩とすずちゃん」と銘打った。地元の物販施設「寄り道パーキング寺家」の運営などに関わってきた出村正幸さん(45)が自費で約千部を用意し、同施設や須須神社、道の駅すずなりなどで希望者に無料で配っている。
須須神社のイルカ伝説は江戸中期の歴史書「能登名跡志(めいせきし)」などに登場する。
伝説では獅子を使者としていた神がある時、「獅子いるか」と呼んだところ、勘違いしたイルカがいち早く応じたため使者をイルカに変えた。獅子は出遅れを恥じて今も残る「獅子岩」に姿を変え、イルカは祭礼日に神社の近くに現れ「いるかの三崎詣り」と言われるようになったという。
創作した物語は伝説を基に、すずちゃんが神の使いとして地域に活気をもたらす筋書きとなっている。リーフレットには神社や獅子岩などの場所を示す地図も掲載した。
イルカは昨年8月以降、珠洲市や輪島市の海で断続的に確認され、出村さんらが「すずちゃん」と愛称を付けて情報発信している。今年4月29日には珠洲市を訪れた女性がすずちゃんの写真を撮影し、再び注目が集まっている。
出村さんは「すずちゃんをきっかけに、寺家の歴史や魅力に興味を持つ人が少しでも増えてほしい」と話した。須須神社の猿女(さるめ)貞信宮司(83)は「神社に伝わる伝説が寺家の情報発信に役立つことはうれしい。ぜひ多くの人に知ってもらいたい」と期待を込めた。