朝乃山が今年、目標に掲げた三役復帰が遠のいた。「あと一歩の所だった」。霧島に紙一重の差で敗れた元大関は、土俵から引き揚げる際、悔しそうな表情を見せた。それでも、左ふくらはぎに不安を抱えるなか「前に攻められた。これは明日につながる」と手応えもつかんだ。番付の降下を最小限にとどめて初場所につなげるため、残り6日間、全力を尽くす。
物言いがつく激しい一番。朝乃山は圧力を生かして攻め、相手の張り手を物ともせず前に前に出た。土俵際ではたき込まれたが、最後まで「前に出る」気持ちを全面に出して手を伸ばし、霧島も土俵の外へ。腹ばいに倒れ込んだ朝乃山の右手が先か。それとも霧島の左足が先か。物言いがついた微妙な一番で協議結果がアナウンスされても、表情を変えずに受け入れた。
今年1月の初場所で、「年内の三役復帰」を宣言した朝乃山。7月の名古屋場所では左上腕の負傷で途中休場し、12日目から再出場すると無傷の4連勝で勝ち越した。先場所は9勝6敗となり、惜しくも年内の三役に届かなかったものの、着実に歩を進める中、秋巡業で次は左ふくらはぎを負傷した。
●「一番一番を大事に」
強行出場となれば再び負傷する可能性もあり、先を見据えて無念の休場を決断した今場所。足の状態を慎重に見極め、三役返り咲きのために途中出場に踏み切った。感覚を少しでも鈍らせないためにも、この途中出場の意味は大きい。負け越しとなったが、「その後が大事。少しでも番付が下がるのを止めるために一番一番を大事にしたい」と気合を入れ直した。