奉納されたイルカの絵を持つ多田権禰宜(左)と出村さん=珠洲市三崎町寺家の須須神社

  ●昨年まで海岸に姿

 2020年から珠洲市三崎町寺家の海岸に姿を見せ、「すずちゃん」の愛称で親しまれた野生のイルカを描いた絵画が19日までに、同所の須須(すず)神社に奉納された。地元出身の画家が5月の奥能登地震で被災したふるさとを元気づけたいと届けた。神社にはイルカが神の使いを務めたとされる伝承があり、神聖視されてきたイルカ伝説を知ってもらうとともに、すずちゃんの再訪に期待している。

 作品は90センチ角のアクリル画で、三崎町寺家出身で東京を拠点に活動する猿見田(さるみだ)正義さん(81)が描いた。「いるかのすずちゃん三崎詣(まい)り」と題し、須須神社の鳥居を背景に金色のイルカが海岸を優雅に泳ぐ姿を捉えた。

 須須神社では今年4月、イルカの絵柄が入った輪島塗の大杯が見つかった。杯が入っていた木箱には猿見田さんの先祖に当たる「猿見田松五郎」と書かれていた。神社に奉納した際に仲介役を務めた「世話人」を務めたという。

 「すずちゃん」の名付け親でもある寺家歴史研究会長の出村正幸さん(47)が木箱のことを猿見田さんに伝え、イルカを題材とした絵画の奉納を打診。猿見田さんが快諾し、約5カ月かけて絵を完成させた。

 猿見田さんは奥能登地震の直後、ふるさとが心配で珠洲を訪ねた。倒壊した須須神社の鳥居を目にしたことで被害の大きさを再認識し、絵筆を握る手はいつも以上に力が入ったという。

  ●故郷を元気づけたい

 須須神社では9月の秋祭りや祝い事の際に、イルカが神社前の海岸に姿を見せる「いるかの三崎詣り」が伝説として残っている。

 絵は年末までに拝殿に掲げる予定で、権禰宜(ごんねぎ)の多田千鶴さん(43)は「絵を見てもらって、神社とイルカの伝説に興味を持つ人が増えてほしい」と話した。

 すずちゃんはミナミハンドウイルカで、昨年4月ごろに珠洲沖を離れ、約200キロ離れた福井県の沖合に移動したとみられる。

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