珠洲市を襲った最大震度6強の地震により、窯が倒壊するなど損害を受けた珠洲焼作家を支援する動きが広がっている。石川県内外の有志が「珠洲焼応援団2023」を結成し、珠洲焼ファンである俳優の常盤貴子さん=北國新聞でエッセー「月がきれいですね」を連載中=が団長に就いた。窯の解体をボランティアで担ったり、再建資金の調達をクラウドファンディングで後押しし、珠洲焼復興の大きな力になる。
珠洲焼作家でつくる「創炎会」代表の篠原敬(たかし)さん(63)=珠洲市若山町出田=は、正院町平床に構える工房のれんが製の窯が地震被害を受けた。幅3メートル、奥行き3メートル、高さ2メートルの前面部が倒れ、アーチ部分も崩壊した。昨年6月の地震では一部の補修で済んだが、今回は基礎から作り直す必要があるという。
篠原さんを支えるギャラリー店主の舟見有加さん(50)=珠洲市若山町出田=は、作家1人で窯の復旧作業をするのは労力がかかるため、手伝う人手が必要と考えた。窯の復活とともに、この機会に珠洲焼の魅力を多くの人に知ってもらいたいと「珠洲焼応援団2023」を発足させた。
常盤さんはNHK連続テレビ小説「まれ」の出演が縁で珠洲に愛着を持つ。珠洲焼の愛好者でもあり、親交がある篠原さんらを通じて応援団長を打診され、快諾した。常盤さんは「大好きな珠洲のために、自分ができることで支えたい」と話す。
●10日に窯修理 東京、大阪から
篠原さんの工房では10日から、窯の解体作業が行われる。東京や大阪、兵庫などからボランティア約10人が駆け付け、金槌(かなづち)を使ってれんがの解体に取り組む。8月には中山達磨さん(71)=珠洲市正院町飯塚=の工房の窯も再建する計画である。
●備前焼作家も資金調達支援
岡山県の備前焼作家の有志も、珠洲焼作家の応援に名乗り出た。珠洲市が2016年に実施した「作家交流事業」に参加した備前焼作家のメンバーは6月下旬、創炎会の窯の再建資金を調達するため、クラウドファンディングを始める。
備前焼の松熊健二さん(37)は「同じ焼き物の作り手として、地震で被害を受けた珠洲焼作家の復興の一助を担いたい」と語った。
9月までに窯の再建を目指している篠原さんは「常盤さんをはじめ、立場を超えて多くの人が支援してくれることには感謝しかない。何とか復活し、珠洲焼のことを知ってもらう力になりたい」と意気込んだ。