今日の社説

2019/09/22 00:31

川井姉妹が五輪へ 「2人で金」の夢実現に前進

 レスリング女子で五輪連覇を目指す川井梨紗子選手(津幡町出身)が、世界選手権57キロ級で優勝を果たし、来年の東京五輪に向けて盤石のスタートを切った。崖っぷちに立たされていた妹の友香子選手も、62キロ級で敗者復活戦から勝ち上がって銅メダルを獲得し、五輪切符をもぎ取った。2人が最高の舞台で躍動する姿は、スポーツに取り組む石川の若い世代に希望を与えるだろう。1年後に「姉妹で金」の夢が実現するように、ふるさとから熱い声援を送りたい。

 世界選手権で圧倒的な力を見せた梨紗子選手だが、ここに至る道は平坦ではなかった。五輪4連覇を果たし「絶対王者」と言われた伊調馨選手をプレーオフにもつれ込む激闘の末、際どくしのいで世界選手権代表の座を勝ち取った。

 レジェンドの壁を乗り越えた勢いをそのままに、今大会は圧倒的な強さで、世界の強豪を寄せつけなかった。24歳の若さで成し遂げた世界選手権3連覇によって、梨紗子選手は、吉田沙保里さん、伊調選手に続き、日本女子レスリング界のリーダーになるにふさわしい実績を重ねたと言える。

 妹の友香子選手は、小学生の頃からあこがれていた姉の背を追ってレスリングの世界に飛び込み、二人三脚で技を高めてきた。世界選手権では3回戦で敗れ、首の皮一枚残して臨んだ敗者復活戦から3位決定戦までトップクラスの地力を発揮して、文句のない勝ちをおさめた。

 姉妹で同時に五輪に臨んだケースとしては、レスリング女子で伊調馨選手が姉の千春さんとともにアテネ、北京大会に出場し、いずれも千春さんが銀に終わり、姉妹で金までは届かなかった。川井梨紗子、友香子両選手には、日本勢として史上初の「姉妹女王」の実現に期待が掛かる。

 共に練習し、互いに「お守りのような存在」として認め合う二人だが、その原点は北陸にある。ジュニア層の育成に熱心なレスリングクラブが各地にあり、両選手も幼い頃からレベルの高い選手層の中で才能を磨いてきた。最強姉妹の五輪ストーリーを、北陸のレスリング王国のさらなる底上げに生かしたい。

厚生年金の対象拡大 中小企業の理解が不可欠

 厚生労働省の有識者懇談会が、厚生年金の加入対象を拡大する報告書を取りまとめた。政府は、社会保障審議会での議論を経て、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針である。

 パートなど非正規の短時間労働者の厚生年金加入は、従業員501人以上の企業で、賃金が月8万8千円以上などの要件を満たした場合に限られているが、有識者懇談会の報告書は、企業規模の要件撤廃を打ち出した。

 公的年金制度の「支え手」を増やして年金財政を安定させ、老後の年金給付を厚くするという方向は妥当であろう。最大の課題は厚生年金保険料の労使折半で中小企業の負担が増えることである。給料が月8万8千円の場合の保険料は約1万6千円で、これを従業員本人と企業が8千円ずつ負担することになる。

 経営余力に乏しい中小企業は、社会保険料の負担が増えると、雇用調整や賃金の引き下げに走る懸念が拭えない。このところの最低賃金引き上げに保険料負担が新たに加わることに不安を訴える経営者は多い。目先の生活のため、保険料の支払いで手取り収入が減るの嫌う従業員もいる。

 経営が厳しい中小企業の理解を得るには、保険料負担で経営を圧迫される企業への配慮や支援策を考えなければなるまい。

 その一方で、人手不足が深刻になる中、とかく「安価な労働力」とみられがちな非正規の短時間労働者を「貴重な人材」とみる企業も増えてきている。将来を見据えて、厚生年金の適用に前向きな従業員もいよう。人材確保策の一環として、厚生年金の対象拡大に積極的に取り組む企業が増えることも期待される。

 低年金者を少なくすることは、社会保障制度改革の重要課題の一つである。厚労省が先に公表した年金財政の検証結果では、厚生年金の企業規模要件を撤廃し、新たに約125万人が新規に加入した場合、現役世代の平均手取り収入に対する年金の給付水準(所得代替率)は、経済成長が標準的なケースで、50・8%から51・4%に上昇すると試算している。