今日の社説

2019/01/20 00:37

志賀原発の審査 断層問題で中身の議論を

 北陸電力志賀原発2号機の安全審査は敷地の断層が動くのかどうかの議論が続いている。原子力規制委員会が昨年9月に開いた前回の審査会合では、北電が示した資料の不備を規制委側が次々と指摘する展開になり、議論はかみ合わなかった。

 年明け後の18日に開かれた会合では、活動性の評価対象とする断層の数で規制委が北電の主張を認めた点で一定の前進はあった。しかし、規制委側は海岸部の断層については、まだ説明が不十分との認識を示し、北電の資料のまとめ方でも再び改善を要求した。

 今回は昨年のように規制委側から「論外」「時間の無駄」といった厳しい意見は出なかったが、依然として実質的な審査に集中できない現状には困惑するほかない。

 規制委が断層調査団の報告を受けて志賀原発の審査を始めたのは2016年6月である。規制委と事務局の規制庁から見ると、審査に臨む北電の姿勢に問題があるのかもしれない。とはいえ、いつまでも議論の入り口にとどまっていれば、審査の効率を問われても仕方ないだろう。

 志賀原発は、東京電力福島第1原発の事故を受けて厳しくなった規制基準に適合しているのかどうか。この肝心な点を明らかにしなければ、地元は安心できない。規制委は断層問題で早く中身の審査に入り、議論を深めてほしい。そのためには、北電側と適切な方法で意思疎通を十分に図る必要があるのではないか。

 規制委は昨年から、審査会合前の規制庁と電力会社の打ち合わせ回数を制限した。電力会社との癒着を疑われないようにする狙いがあるとみられるが、議論をかみ合わせて審査の効率を高めるためには準備が重要になるはずだ。

 北電が提出した資料を分かりやすく整理する必要があるとしても、規制庁の担当者が貴重な審査時間を使って北電に資料作成や説明方法の問題点を次々と指摘する様子には違和感を拭えない。

 資料やデータのまとめ方は、事前に打ち合わせを済ませておいてほしい。北電には、多忙な規制委員と規制庁職員の事情にもっと配慮する姿勢が求められているのかもしれない。

北方領土交渉 曲げてはならぬ歴史認識

 日ロの平和条約締結と北方領土返還交渉で、ロシア側が強硬な主張を繰り返している。北方領土のロシア主権をまず認めよという従来の主張のボルテージを上げているのは、日ロ首脳会談を22日に控え、日本側を揺さぶる交渉術の側面もあろうが、北方領土に関するロシア側の歴史認識は到底受け入れられない。

 北方4島は日本固有の領土で、旧ソ連が日ソ中立条約に違反して占領して以来、不法占拠が続いているという日本の歴史認識は、北方領土返還要求の根拠であり、この点でロシア側に譲歩することがあってはなるまい。

 安倍晋三首相とプーチン大統領は昨年11月、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記した日ソ共同宣言を基礎にして平和条約交渉を加速させることで合意した。交渉の実務を仕切るラブロフ外相は、河野太郎外相との会談後、北方4島がロシア領となった第2次大戦の結果を認めることが交渉の大前提という主張を繰り返し、日本が国内法で北方領土と呼ぶこと自体を批判した。

 年頭記者会見ではさらに、旧敵国条項の一つである国連憲章107条を持ち出して、自説を正当化した。同条は、第2次大戦の結果として連合国が敵国に対して取った措置は揺るがないとしており、日本が大戦の結果を受け入れずに領土返還を要求するのは、国連憲章上の義務違反というのである。既に死文化した旧敵国条項を掲げて戦勝国の論理を押しつける物言いは、日本国民の感情を逆なですることにもなろう。

 ラブロフ氏は、自身の強硬発言について「最後通告でも前提条件でもない」と述べているが、ロシア国内や日本だけでなく、国際社会への発信をも意図しており、日本側の沈黙は、事実上の容認と受け取られかねない。

 国後、択捉両島の返還交渉継続などが担保されるなら、歯舞、色丹の「2島先行返還」も選択肢としてあり得ると考えるが、ロシア側の歴史認識に沿った平和条約となれば、歯舞、色丹は戻っても国後、択捉返還の道は閉ざされると認識しなければならない。