今日の社説

2020/02/21 00:32

新型肺炎が拡大 過度な自粛ムード控えたい

 新型肺炎の感染拡大を受け、天皇誕生日の一般参賀が取りやめとなり、3月1日の東京マラソンは一般ランナーの参加を見送るなど、多くの人が集まるイベントの中止が相次いでいる。国が不要不急の集まりを控えるよう求めたことも背景にあるのだろう。石川県でも3月8日に七尾市で開催される能登和倉万葉の里マラソンが中止となったほか、金沢市で開催予定だった「市民防災セミナーin金沢」が取りやめになった。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客で、入院中だった80代の男女2人が死亡するなど、感染の広がりが深刻さを増している。渡航歴のない人からコロナウイルスが検出されたり、感染経路が不明な患者が出るケースもあり、得体の知れないウイルスを怖いと思うのは当然だろう。

 だが、確実な予防法や治療薬がないのは、ごく一般的な風邪も同じだ。日本感染症学会は、新型コロナウイルスの感染性や病原性は「インフルエンザ相当か、やや強い程度」、厚生労働省は「重症急性呼吸器症候群(SARS)やインフルエンザより弱く、致死率も低い」としている。

 皇居に8万人を超える人が集まる一般参賀や3万8千人が一斉に走る東京マラソンならいざ知らず、感染者が1人も出ていない北陸で、過度に自粛ムードを高める必要性があるとは思えない。糖尿病、心不全、呼吸器疾患などの基礎疾患がある人は別として、一般市民は今のところ、インフルエンザと同程度に考えていれば良いのではないか。

 多くの人が新型肺炎の感染を恐れ、マスクの着用や手洗いなどを徹底した影響で、国内ではインフルエンザの感染者が減っており、厚労省の調査では、過去10年で2番目に少ない。

 これに対し、米国ではインフルエンザが大流行しており、米CNNテレビは、今シーズンの感染者が全米で少なくとも2600万人、死者は少なくとも1万4000人に増えたと報じている。それでもメディアの報道は控えめで、米国人はさほど気にしている様子はない。イベントの自粛ムードも一切ないという。

揺らぐ米比同盟 日本の海洋安保にも影響

 フィリピンと米国の同盟関係が揺らいでいる。フィリピン政府は今月、同国内の米軍の法的地位を定めた協定の破棄を米側に通知した。今のままでは8月に地位協定は失効し、合同の軍事演習などの実施は困難になるとみられる。

 米比の同盟関係は東南アジアや南シナ海の安定に抑止効果を発揮している。関係悪化は、南シナ海で軍事力を拡大する中国を利することになり、日本の海洋安全保障戦略も影響を受けかねない。

 地位協定が失効しても、米比の相互防衛条約や防衛協力強化協定は存続する。ただ、トランプ米大統領は地位協定破棄について「私は構わない。お金を節約できる」と述べ、在比米軍の削減をにおわせている。一方、フィリピンのドゥテルテ大統領は、米軍のフィリピン再駐留を事実上認める防衛協力強化協定をも破棄する可能性に言及している。

 日本は海洋安保の観点からフィリピンとの防衛協力を強化し、米比の合同軍事演習に自衛隊を参加させている。両大統領の短慮で米比同盟が一気に弱体化することがないよう、日本は働き掛けを強める必要があろう。

 ドゥテルテ氏が地位協定の破棄を決めたのは、米国の外交措置に報復する狙いとされる。強権的な麻薬犯罪対策を指揮した元警察トップの入国ビザ発給を米国が拒否したことに、ドゥテルテ氏は激しく反発したという。

 反米的な行動の背景には、中国に対する思惑や計算もあろう。中比両政府は現在、南シナ海の資源開発交渉を進めている。習近平国家主席は、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)での天然ガス共同開発の権益をフィリピン60%、中国40%にすると提案。その条件として、南シナ海の中国主権を否定した仲裁裁判所の判断を無視するよう求めているという。

 フィリピンは本来、仲裁裁判所判断を断固支持すべき立場であるが、ドゥテルテ氏は曖昧な姿勢をとり、経済面で中国に傾斜している。ガス開発の条件をのみ、中国の主権主張を事実上認めることがあってはなるまい。