今日の社説

2020/08/08 00:33

連休、旧盆の帰省 旅行自体のリスクは低い

 首都圏や関西圏などで感染者が増えるなか、8日からの3連休や旧盆休みを利用した帰省により、感染の地方拡散を不安視する声がある。谷本正憲知事は会見で、東京など感染拡大地域との往来を慎重に判断するよう求め、富山県の石井隆一知事も首都圏や関西圏、中京圏との往来について、できるだけ自粛するよう呼び掛けた。

 お盆期間の帰省などでは、高齢者と接する機会が増える。若い世代が子連れで帰省すると、重症化リスクの高い高齢者への感染が気になるのだろう。

 加えて、普段より混み合う交通機関の利用も不安材料の一つだ。公共交通機関を乗り継いでターミナル駅や空港に移動し、新幹線や航空機を利用するリスクは一見、高そうに思われがちだが、政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は「旅行自体に問題はない」との見解を示している。

 新幹線や航空機には強力な換気・空調装置が作動しており、いわゆる「密閉空間」ではない。これまでに通勤電車でクラスター(感染者集団)が発生した例もなく、過度な心配は不要だろう。

 政府は一律の自粛は要請せず、各自の判断に委ねるとしている。帰省先に高齢者がいるか、健康状態や基礎疾患の持病がないか、「3密」を避けられる十分なスペースがあるかどうかを総合的に勘案し、各自が判断してほしい。

 移動中より帰省先での慎重な行動が重要であり、身体的距離の維持やマスク着用など「新しい生活様式」を実践したい。

 JR旅客6社によると、8月7~17日のお盆期間の新幹線と在来線特急の指定席予約が前年同期比で8割近く減少している。日本航空や全日空は前年の4割程度にとどまった。

 新幹線や在来特急は車内に設置された空調装置や換気装置により、6~8分で全ての空気が入れ替わる。航空機も、飛行中に新鮮な空気を大量に取りこみ、3分ほどで機内の空気が入れ替わる。空気は常に天井から供給され、床下へ流れ、特定の場所に滞留することもない。新幹線や飛行機での移動は、感染リスクが低いという事実を知っておきたい。

TPP閣僚会合 一国に頼らぬ供給網を

 環太平洋連携協定(TPP)に参加する日本など11カ国は、閣僚級会合をテレビ会議形式で開き、自由貿易の推進で一致した。新型コロナウイルス禍による経済危機を克服するため、先進的貿易ルールで一致するTPP11カ国が保護主義に対抗し、連携を強めることは重要である。

 今回のTPP会合でさらに注目したいのは、サプライチェーン(部品の調達・供給網)の強靱(きょうじん)化で連携する方針を確認した点である。コロナ禍で、調達先が一国に集中する危うさを思い知らされ、とりわけ中国に頼りすぎる現状を改める「脱・中国依存」の必要性が、各国の共通認識になったことを示すものであろう。TPPの枠組みを生かし、調達先の多様化が進むことを期待したい。

 コロナ禍が中国から拡大したとき、中国を中心にした製造業のサプライチェーンが寸断され、日本の自動車生産が一時休止に追い込まれた。医療用品の不足はもとより、トイレ設備などの輸入が滞って住宅の引き渡しが遅れるなど、中国製の製品があふれる経済社会のリスクが露呈した。

 海外の生産拠点が中国に集中する状況を改めるため、10年以上も前から「チャイナ・プラスワン」の重要性が説かれ、インドやタイなどに拠点を構える企業は増えてきたが、日本企業の海外拠点で最も多いのはやはり中国であり、全体の4割以上を占めている。

 日本にとって、中国との経済関係は極めて重要であるものの、米中の覇権争いやコロナ収束後の世界経済も見据えながら、生産拠点や調達先の多様化、分散化を戦略的に進める必要があろう。

 経済の相互依存が深まると、一般的に対立や紛争も抑止されると言われてきたが、現在の米中対立などを見る限り、その見方は当てはまらない。中国は経済の相互依存関係を、いわば人質にして相手国に圧力をかけ、自国の方針に従わせる動きが目につく。

 そうした状況を「経済相互依存の罠(わな)」と表現して警戒を呼び掛ける研究者もいる。TPPの強化はその対応策の一つと言え、経済安保戦略でも有効であろう。