今日の社説

2020/03/29 01:34

緊急経済対策 消費者心理に届く規模で

 政府・与党が感染拡大による景気失速を防ぐ緊急経済対策として、現金給付の検討を進めている。現金の場合、貯蓄などに回る可能性があるとの見方から、商品券などによる給付を模索する動きもあるが、いずれにせよ、ある程度まとまった額でなければ消費喚起の効果は期待できない。

 リーマン・ショックを受けて2009年に実施した「定額給付金」では、1人当たり1万2000円を支給した。こんな水準では生活困窮者の助けにならず、冷え込んだ消費者の心も動かない。

 香港政府は、18歳以上の市民1人あたり1万香港ドル(約14万円)の現金支給を柱とする経済対策を公表した。米国も国民への現金給付を検討しており、トランプ政権と共和党案では、成人に最大1200ドル(約13万円)、未成年に500ドルを見込んでいる。景気を下支えするには、消費者心理に十分届く財政規模が必要だろう。

 政府・与党内からは、最大で一世帯当たり20万~30万円程度の現金給付を求める声が上がる一方、現金では消費拡大の効果が薄いとして、商品券配布を支持する声も根強い。公明党は所得制限を設けたうえで、1人当たり10万円の現金給付を求め、国民民主党は10万円の現金給付と最長2年にわたって消費税率を5%に減税する案を発表している。

 新型コロナの感染拡大は世界規模で経済活動を萎縮させ、リーマン・ショックを超える経済危機をもたらす可能性がある。公共投資は昨年12月の経済対策で6兆円が計上されており、人手不足のなかで、これ以上増やすのは難しい。

 となれば、GDPの6割を占める消費をいかに活性化するかが最大の課題であり、景気を失速させないための予防的な対策が今こそ求められる。スピード感を持って取りまとめを急ぎ、遅くとも5月には支給してもらいたい。

 2019年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は年率換算で7・1%減だった。まさに衝撃的な数字であり、新型コロナウイルスの影響が出てくる1~3月期は、さらに落ち込むだろう。「巣ごもり消費」では、経済活動はしぼむばかりである。

聖火リレー走者 地域に灯ともす先導役に

 東京五輪・パラリンピックの1年程度延期が決まったことで26日から始まる予定だった聖火リレーが中止になった。6月1、2日に石川県、3、4日に富山県をコースにした巡回も行われない。聖火を東日本大震災から立ち直ったシンボル「復興の火」と位置づけ、列島を継走して元気な日本の姿を世界に届けるハイライトシーンがなくなったことは残念だ。準備を進めてきたランナーをはじめ、関係者たちの落胆も察するに余りある。

 だが、計画が全くの白紙になったわけでない。大会組織委員会は現状のルートや走者を尊重し、配慮する方針を示した。新たな日程はしばらく待たねばならないが、気持ちを切り替えて晴れの舞台を待ちたい。今は新型コロナ禍で日本中に沈滞ムードが漂っている。幸運にも代表として選ばれた聖火ランナーたちはぜひ、手にトーチがなくとも待機期間中、地域に灯をともし、明るくする先導役になってもらいたい。

 感染者が9人となった石川県も経済的なダメージはむろん、地域活動の影響が大きい。引き続き感染防止に努めながら、早く元の生活を取り戻さなくてはいけない。地方の強みの一つは地域のコミュニティーにある。特別な行動でなくていい。共助の心を持って身の回りに目配りして、一人ひとりができることに取り組みたい。

 今は平常に戻り始めたが一時、デマが流れてトイレットペーパーを買い求める人が量販店などに殺到し、深刻な紙製品不足に陥った。こうしたしわ寄せは常に生活弱者に回ってくる。山梨県の中学1年生が貯金を使ってマスク約600枚を手作りし、県に贈ったニュースが話題になったが、県内でも同様の活動は見られる。小さくとも個々の行動が地域に活気をもたらし、大きな輪をつくる原動力になりうる。

 東京五輪はオリンピック史で初めて延期となった五輪として後世に語り継がれるだろう。その成功の鍵を握るコロナ克服に向けて日本人として、地域の一人として真摯に向き合い、誠実に対応していきたい。