今日の社説

2020/07/12 00:33

秋に金沢修学旅行 一過性に終わらせぬ工夫を

 秋の修学旅行先を金沢にする首都圏や関西圏の中学、高校が増えている。新型コロナウイルスの感染対策上、混雑する大都市を避けて目的地を変える動きがでてきたためだ。観光客の激減に頭を抱えていた金沢のホテル業界にとっては願ってもない特需であり、誘致に取り組む県や市は臨時的な代役で終わらせないよう種まきをしっかりして石川に目を向けた流れを大きくしたい。

 修学旅行の訪問地では東京や京都、大阪をはじめ北海道、沖縄などが多い。コロナ禍によって春の修学旅行を延期した各学校が感染防止のため、そうした定番地からリスクの低い地方に行き先を切り替えるのもうなずける。その中で金沢を選ぶのは北陸新幹線開業後、人気スポットに浮上した話題性も多分にあるだろう。が、これを機に騒々しい都会の観光地と一線を画す金沢は豊かな自然と城下町の風情が織り成す文化都市であり、教育目的とする修学旅行の適地であることを印象づけたい。

 図らずもコロナ禍前まで押し寄せていた観光客の人波もなくなり、今は落ち着いた雰囲気の中で名園や名所に息づく金沢の良質な美や伝統に触れることができる。文学から美術工芸、芸能、建築まで歴史に裏打ちされた幅広い文化が程良い規模の都市空間の中にそろい、格好の学びの舞台として親しんでもらえるはずだ。

 金沢市内のホテルでは、秋に変更した修学旅行の団体予約が入り出し、昨年実績を大幅に上回ったり、滋賀や三重、新潟の学校から新規注文を受けたりしているという。コロナ終息のめどが立たない中で、金沢に吹いた幸運の風を一過性にしない取り組みが必要だ。

 県と市が三大都市圏から誘致した修学旅行は新幹線開業後、右肩上がりで増えたが、2017年度の78校をピークにその後は伸び悩み、新たな一手が求められていたところだ。県や市は各ホテルの状況を把握し、訪問先とも連携を取り、各校のサポートに務めたい。好印象をもってもらう実績づくりが誘致を増やす強みになる。海や山を抱え魅力的なコースになる能登、加賀をPRする好機でもあり、石川ファンを広げたい。

等伯作品が文化財に ふるさとの宝に新たな光

 七尾生まれの画聖、長谷川等(とう)伯(はく)と養父宗清(むねきよ)(道浄(どうじょう))合作の仏画が氷見市の有形文化財に指定された。昨年4月に修復を終えた仏画は同市立博物館で公開されるなど、ふるさとの宝に新たな光が当たり、顕彰と継承に弾みがついたといえる。

 今回、文化財指定を受けた日蓮宗蓮乗寺(氷見市)が所蔵する仏画「絹本著色宝塔絵曼荼羅図(けんぽんちゃくしょくほうとうえまんだらず)」は、作者不詳とされてきたが、2010年から北國新聞社が実施した「長谷川等伯ふるさと調査」によって等伯らの合作であることが確認された。室町時代にさかのぼる貴重な絵画として史料価値が高いと評価され、等伯に関連する北陸の文化財が掘り起こされた。

 等伯は、「国宝中の国宝」と称される「松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)」など数々の傑作で名高く、豊臣秀吉らに重用された京での活躍が広く知られているが、「信春(のぶはる)」と名乗っていた能登時代の足跡については、調査研究が十分に進んでいなかった。

 等伯没後400年を機に実施された「等伯ふるさと調査」は能登時代の等伯に焦点を当てたもので、石川、富山両県や京都、関東などを美術、歴史の両面から調査して、信春時代の作品を新たに確認するなど多くの成果を挙げた。

 能登時代の足跡を明らかにすることは、日本美術史に重要な位置を占める等伯の実像に迫るとともに、より多くの人が等伯を身近に感じて、畠山文化など能登の豊かな文化土壌に関心を持つきっかけにもなる。各地に残る等伯の遺産を大切にして、地域振興にもつながる魅力を広く伝えていきたい。

 等伯らの作品と確認された氷見の仏画は当初、年月による劣化や損傷が著しく、依頼を受けた石川県文化財保存修復協会が修復にあたり、描かれた彩色と線描がよみがえった。ふるさとの貴重な文化財の価値を守り、後世に伝えるためには、地域に根差した保存修復技術の継承が重要なことも改めて実証された。

 等伯関連では、北國総合研究所が主催する「等伯と一門 ルーツ探訪」の調査が行われており、「等伯ふるさと調査」に続く多くの成果を期待したい。