今日の社説

2020/02/20 01:00

日銀金沢支店跡地 歌劇座移築は最良の選択肢

 金沢歌劇座の建て替え候補地に、日銀金沢支店跡地が浮上したのは、誰もが納得できる成り行きではないか。歌劇座は18メートルの高さ制限により、現在地での建て替えが難しい。

 その点、移転する日銀の跡地は高さ制限が45メートルと十分すぎるほどの余裕があり、高さ不足の問題は解決する。

 日銀金沢支店は正面から見ると狭いように感じるが、意外に奥行きが深く、歌劇座の1919席と同程度の客席を確保できるという。敷地面積に不足がないなら、歌劇座の移築は、最良の選択肢といえるだろう。移築であれば、2、3年を要する工事中に現在の歌劇座を使える利点もある。

 日銀金沢支店は香林坊の表通りに面し、出張所時代を含めると、1世紀余にわたって存在感を示してきた。歴史ある重厚な建造物が消えてしまうのは寂しくもあるが、まちなかの一等地ににぎわいを生み出す絶好の機会である。

 日銀跡地は、演劇や歌舞伎、オペラ、バレエ、コンサートなどを鑑賞する場として最適だ。交通の便が良く、食事やお茶を飲む場所にも困らない。

 欧州の主要都市には、中心部に劇場があり、市民の社交場になっている。世界基準でみても遜色(そんしょく)のない、斬新で格調高い建造物が街なかにできれば、金沢の印象は随分変わってくるだろう。都市の格をワンランク上げ、新たなランドマークにもなり得る。

 日銀跡地の利用法は、以前から難航が予想されていた。民間に売却すれば何が建つか分からない。金沢でも指折りの場所だけに、行政としてもそんなリスクは極力避けたいところである。

 山野之義市長は「これまでより一層踏み込んだ形で、市が主体的に取り組みたい」と述べ、跡地の利用方法を含めて金沢市が開発に関与する意向を示していた。歌劇座の移築案には現実味がある。

 日銀の移転時期は2023年ごろとみられる。3年という期間は長いようで短い。金沢市は、積極的に検討を進め、できるだけ早く最終案を示してほしい。日銀跡地で良いとなれば、移転から着工まで段取り良く進める必要がある。

児相の女児追い返し マンパワー不足の解消を

 神戸市の「こども家庭センター」(児童相談所)に当直中のNPO法人職員が、助けを求めて訪れた小学生女児を追い返していた。信じがたい話であり、非常識な対応と言わざるを得ない。

 来訪者があった場合の取り決めが守られなかった上に、市へ報告義務も怠っていた。NPO法人が請け負っている業務全体を点検し、ずさんな仕事ぶりがほかにもなかったか、問題点を洗い出す必要がある。

 児相が対応する相談件数は統計を取り始めた1990年度以降、一貫して増え続けている。それにもかかわらず、マンパワーが追いついていない。神戸市がNPO法人に一部業務を委託していたのも人手不足が背景にある。

 政府は2020年度、児相を設置する自治体への財政支援を拡充し、施設整備に充てられる地方交付税の割合を高め、国の負担を約7割に引き上げる。児相で働く児童福祉司らの処遇改善も進める。国の支援強化を機に、各自治体は児相の機能充実に努めてほしい。

 女児は午前3時すぎ、こども家庭センターを訪れ、夜間窓口のインターホン越しに、「家庭でもめ事があり、家を追い出された」と申し出たという。夜間や休日の窓口業務を委託されているNPO法人職員が、インターホン越しに「警察に相談して」と告げ、中に入れなかった。

 こんな時間に女児1人で訪ねてくれば、深刻な事態に陥っていると思うのが当然だろう。当直の職員は「見た目が大人っぽかったので緊急性を感じなかった」と話しているというが、ばかげた言い訳にしか聞こえない。

 女児は30分後、近くの交番を訪れ、連絡を受けた同センターが改めて保護した。周辺は神戸港に面した商業地にあり、女児が無事だったのは幸運だった。

 千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さんが自宅で死亡し、傷害容疑で両親が逮捕された事件でも児相が一時保護するなどしていたが、心愛さんを救えなかった。子どもの命を最優先に考え、行動する決意を新たにしたい。